2008年4月10日(木)「しんぶん赤旗」
自民議員励ます会に出席
NHK経営委員長が釈明
古森重隆NHK経営委員長(富士フイルムホールディングス社長)は八日の経営委員会で、二月下旬に開かれた自民党の武藤容治衆院議員を励ます会に出席したことについて、「私人としての行動だった」と報告したことを明らかにしました。
古森委員長は「武藤議員は富士フイルムの元社員で、社長として出席した」と述べました。会のあいさつで自ら経営委員長であることに触れたことについては、「NHKをよろしくとは話したが、経営委員長として出たわけではない」と釈明しました。
「励ます会」出席の件については、本紙三月一日付が「古森NHK経営委員長の『政治との距離』はどこに」の見出しで報じました。また三月三十一日の参院総務委員会では、日本共産党の山下芳生参院議員が「不偏不党であるべきNHKを監督すべき経営委員長として、視聴者に誤解を与えることはやめるべきだ」と古森委員長を厳しく批判していました。
解説
政治との距離わきまえず
古森重隆経営委員長は昨年六月の就任以来、経営委員長としての資格を疑わざるをえない言動を繰り返してきました。
昨年九月の経営委員会では、「選挙期間中の放送については、歴史ものなど微妙な政治的問題に結びつく可能性もあるため、いつも以上にご注意願いたい」と制作現場をけん制。今年一月にも番組に関与する意見を述べています。三月の経営委員会では、国際放送で「利害が対立する問題については、日本の国益を主張すべき」だと語り、大きな問題になりました。
放送法第一条第二項は「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」を定め、経営委員会の委員も当然、この規定に従う立場にあります。
古森氏が、与党である自民党の武藤衆議院議員を励ます会の発起人を務め、その会に出席して「NHKをよろしく」とあいさつすることは、NHKと政治との距離をわきまえない、不見識な行為といわれても仕方がないでしょう。武藤議員のホームページには、二〇〇六年の活動報告として、NHKについて「国営放送の位置づけが必要であるという認識から…『放送産業を考える議員の会』を立ち上げ、NHK本社を訪問」したことが書かれています。
戦後、放送法を制定する際、経営委員会は権力からの独立を組織・人事の面から保障する趣旨で設けられました。外部からの圧力に抗し、「表現の自由」を守る防波堤の役割を果たすのが本来の姿なのです。
ところが古森氏の言動を見ると、経営委員会が防波堤になるどころか政府の代弁機関になりかねないのが実情です。昨年末に放送法が改悪され、経営委員会の権限が強化されて、その危険性はいっそう強まっています。
古森委員長自身も、安倍前首相を囲む財界人の会のメンバーで、安倍氏が公共放送NHKに送り込んだといわれています。NHKの監督機関の長としての適格さが改めて問われます。(板倉三枝)