2008年4月10日(木)「しんぶん赤旗」

主張

白川日銀総裁

民意の重さを受け止めよ


 戦後初の「空席」が続いていた日銀総裁に白川方明・副総裁が就任しました。

 総裁が三週間も空席となった最大の責任は、野党が賛成し得ないことが分かっていた人物に固執した福田内閣にあります。日銀は今回の経過の根底にある民意に、誠実に耳を傾けるべきです。

審判軽視の福田内閣

 福田内閣が日銀総裁に推した一人目の武藤敏郎氏は日銀副総裁として異常な金融緩和を推進し、財務次官として社会保障の連続的な抑制路線を進めました。二人目の田波耕治氏は大蔵次官として大銀行への血税投入を推進しました。いずれも家計を痛めつけ、大銀行・大企業を応援する本末転倒のやり方をすすめてきた行政の責任者です。

 国会の所信聴取でも二人は失政を正当化し、反省を示しませんでした。日銀法が定めた「国民経済の健全な発展に資する」という日銀の使命に照らして、総裁の任にふさわしくないことは明らかです。

 実績も現在の立場も日銀総裁にふさわしくない人物を、財務省の幹部だったというだけで総裁の席に就かせようという政府の姿勢には、まったく道理がありません。

 以前なら、不当な総裁人事でも自民党、公明党の多数でごり押しすることができました。しかし、昨年の参院選で与党が惨敗し、数の暴力に大きな制約が生まれました。「国民の意見が反映されるよう」(当時の大蔵省答弁)、総裁・副総裁の任命に国会の同意を不可欠の条件とした日銀法の趣旨が、初めて発揮できるようになっています。

 福田内閣が強引な総裁人事を繰り返し、政権を担う当事者能力さえ疑われる混迷に陥ったのは、参院選で示された国民の意思を軽視した結果です。厳しい審判が下った大企業応援・くらし犠牲の「構造改革」路線を改めず、それと一体の超低金利政策に固執する政治こそ、深刻なゆきづまりの根本原因です。

 高齢者に差別医療を押し付ける後期高齢者医療制度の問題でも、道路特定財源と暫定税率、道路中期計画の問題でも、根底にあるのは自公政治と国民との深い矛盾です。

 白川総裁のもとで、ようやく新たな体制でスタートする日銀は、このことを重く受け止めるべきです。

 超低金利で大企業・大銀行を応援し、その利益を拡大すれば、やがて家計に波及して自律的な成長が実現するという議論は完全に破綻(はたん)しています。

 日銀が机上の空論で想定したようには所得が増えず、長期にわたって家計の冷え込みが続いています。

 半面で副作用は確実に働いています。十年以上の長期に及ぶ超低金利政策は、国民が受け取るはずだった預金利息を絶えず吸い上げ、大企業や大銀行に分け与えてきました。日銀自身の試算でも、吸い上げられた利息は三百兆円を超えています。

くらしと家計に軸足を

 副作用は預金利息の吸い上げにとどまりません。超低金利の恒常化は世界経済を混乱させている投機マネーの供給源になっています。国際的な投機集団が利上げを心配することなく、ただ同然の金利で「円」を調達し、それを元手に金融や石油、穀物など世界の市場で投機の嵐を吹き荒れさせてきました。これが、石油や生活必需品の高騰となって国民生活にはねかえっています。

 日銀に求められているのは、異常な超低金利政策を根本から反省し、民意に従って金融政策の軸足をくらしと家計に移すことです。


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