2008年4月7日(月)「しんぶん赤旗」

アルゼンチン農業スト

富農・富裕層が“指図”

輸出利益への増税に抵抗

革新政権への攻撃にも利用


 【メキシコ市=島田峰隆】農産物の輸出税引き上げに反対するアルゼンチンの農業団体による抗議行動は、各団体が一カ月間のスト休止を決めたことで五日までに収束しました。この抗議行動には多くの農民が加わりましたが、最も積極的にあおったのは、輸出で収益を上げる一握りの大土地所有者や富農、都市部の富裕層で、これにたいする労組や社会団体の反発も起きています。


 政府が三月上旬に示した案は、大豆とヒマワリの輸出税を引き上げる一方、トウモロコシと小麦の税率は引き下げるというもの。大豆の国際価格高騰による収益増に見合った税負担を生産者に求めるとともに、国民生活にかかせないトウモロコシや小麦といった主要穀物の生産を引き上げる狙いでした。

 ところが大土地所有者で構成する農牧協会をはじめ四つの農業団体はこの措置に強く反発。中小零細農民を動員して、約三週間にわたり主要幹線道路を封鎖する行動にでました。

 このため商店への食料品供給は滞り、国民生活は混乱。輸出が停滞し世界の穀物市場に影響を与えました。

著しい格差が

 アルゼンチンでは、大土地所有者、富農とその他の中小零細農民の間には規模の点で著しい格差があります。

 たとえば土地の55%を2%の富農が所有。大豆では、わずか20%の生産者が収穫全体の八割を独占し、さらにその20%のうちの2・2%が収穫全体の46%を占めているといいます。

 最近の穀物価格の上昇によって輸出で莫大(ばくだい)な利益を上げているのは、これらの大土地所有者や富農です。今回の抗議行動の背後には、こうした特権層の指図があったといいます。

 英BBC放送は、道路封鎖の現場を取材した記事で、「(抗議行動を)命令しているのは豊かな農民たちだ、と何人かの住民はこっそりと不平を述べた」と伝えました。

 地方での抗議行動に呼応して都市部では、裕福な住民が街頭で農業団体に「連帯」する行動を開始。食料不足への国民不安を革新的なフェルナンデス政権への攻撃に利用しました。

区別する必要

 アルゼンチン政府は三月三十一日、「小規模農家を区別する必要があることは明らかだ」として、小規模農家を増税対象から外すと発表しました。一日には農民団体にスト参加をやめるよう呼びかけたフェルナンデス大統領を支持して、労組や社会団体による大規模な集会が大統領府前で行われました。

 メキシコ紙ホルナダ三月三十一日付はこの問題の解説記事を掲載。大土地所有者と富農に富が集中している実態や「中産階級」が混乱を利用していること、政府が農民全体を課税対象にしていることなど問題点を列挙。「農民と大土地所有者を区別することが必要だ」と強調しました。


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