2008年4月7日(月)「しんぶん赤旗」
長崎県知事と農水政務官の親族企業
諫早干拓農地に入植
672ヘクタールの約5%
県民 「ムダ推進し恩恵とは」
農水省と長崎県が税金二千五百三十三億円を投入して推進した国営諫早湾干拓事業で造成された農地の営農が四月から始まりました。干拓農地は六百七十二ヘクタールですが、約5%にあたる約三十二ヘクタールを地元選出の農水大臣政務官、谷川弥一自民党衆院議員(長崎3区)と、金子原二郎県知事の親族が役員を務める企業が借り受けていたことがわかりました。ばく大な税金が投入され、今後もさまざまな支援策が予定されており、疑問の声があがっています。
この親族企業は、「T・G・F」(長崎県大村市、資本金二百万円)。谷川政務官の長男が代表取締役、その配偶者で金子知事の長女が取締役(いずれも三月二十日付で辞任)です。
干拓農地における営農開始にあたっては、県が全額出資する県農業振興公社がすべての干拓農地を五十一億円で取得するという全国初の干拓農地リース事業を採用しました。
公社は昨年八月、入植者を募り、六十二の個人、法人から応募がありました。公社は、企業名などを伏せたうえで、有識者による「農業者選考委員会」に入植希望者の営農計画の実現性や販売ルートを確保しているかなどを点数化して示し、昨年十二月、四十四件(のち二件辞退)の貸付先を決定、ことし二月、リース契約を結びました。
「T・G・F」もその一つですが、農地造成事業が最終段階に入った昨年一月に設立された会社で、干拓農地のリースを目的として設立された疑いも指摘されています。
金子知事は三月十九日の記者会見で、「こういう農業法人をつくるということを二―三年前に娘から聞いた」と認めたうえで、昨年九月三日の応募締め切りのとき、事前に応募者のリストを見て、「役員を外れた方がいい」と思ったが「ついつい言いそびれた」などと話しています。
公社が負担する五十一億円の財源は県からの貸付金などで償還する計画で、返済完了まで九十八年かかるという荒唐無稽(こうとうむけい)の仕組み。しかも、リース料は十アール(一千平方メートル)当たり年間一万五千円(最初の五年間)という「破格の安さ」です。
干拓事業による有明海全域にわたる環境破壊と漁業被害や、営農に苦しむ近隣農家への援助との「格差」に漁民、農民をはじめとした県民の怒りが高まり、五十一億円の公金支出の差し止めを求める住民訴訟が提起されています。「諫干への公金支出をやめさせる会」は三月三十一日、金子知事あてに、T・G・Fが条件のよい干拓地を占めていることも指摘、入植者の選考経過と知事自身のかかわりを明らかにするよう申し入れました。
「よみがえれ!有明海訴訟弁護団」は、「このようなばく大な公金支出の恩恵を、それを推進してきた地元自治体の首長と主務官庁の大臣政務官の親族企業がまっさきに受けることは言語道断といわざるをえない」として、金子知事と谷川政務官が明確な説明責任を果たすよう求める「声明」を発表しています。