2008年4月4日(金)「しんぶん赤旗」
道路財源 共産党の論戦 動かす
首相、“一般財源化は審議への回答”
福田康夫首相は、二〇〇九年度から道路特定財源を一般財源化する「新提案」を発表しました。これは、国民世論と国会論戦が政府を追い込んだ重要な成果です。首相自身もメールマガジンで、「これらの提案は、いずれも国会審議の中で明らかとなった問題への回答です」(四月三日)と認めています。政府・与党に従来の路線の転換を迫った日本共産党の論戦と世論の変化を振り返ると―。
「総額ありき」ただす
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道路特定財源の根本問題は、国民生活に本当に必要な予算を積み上げるのではなく、まず総額を確保し、それを使いきる“総額先にありき”の仕組みをとっていることにあります。この仕組みが「自動装置」となって、必要性も採算性も度外視した道路づくりを続けさせてきたのです。
日本共産党は、この問題を真正面からただしてきました。
仁比聡平議員は、十年間で五十九兆円を道路建設に注ぎ込む「道路中期計画」の積算根拠を追及。国土交通省は、計画の大部分を占める「基幹ネットワークの整備」の積算根拠が、二〇〇七年度予算の実績を機械的に当てはめて十倍化しただけのものであることを認めました。(二月一日の参院予算委員会)
五十九兆円といえば、国民一人あたり約五十万円、四人家族では約二百万円もの巨額負担になります。にもかかわらず、その積算根拠が「どんぶり勘定」だったことが明らかになったのです。
論戦では、道路特定財源の流用や不明瞭(ふめいりょう)な使途、潤沢な財源に寄生する天下り、随意契約の横行なども野党の追及で、次々と発覚しました。
三月初旬のJNN調査では、「道路中期計画」を「見直すべき」と回答した人は実に90%に達しています。“総額先にありき”の計画に、国民の厳しい批判が集まったのです。
政府のごまかし論破
福田首相は審議開始当初、「私の内閣ではじめて『一般財源化』できることを法律化した」と自慢しました。しかし、この首相の欺まんを明らかにしたのは佐々木憲昭議員らの論戦でした。
国民の多くが求める「一般財源化」は、福祉にも暮らしにも道路にも使える財源にすることです。しかし、政府の法案では、一般財源として使えるのは、道路建設に使った残りのわずか2%しかありません。しかも、その税収も道路関連の予算にしか使えず、それに相当する額は翌年度の道路整備費に上積みされて道路特定財源は、増えていく仕組みになっていたのです。
佐々木議員はこの欺まんを暴露し、「政府の主張は、三重に国民をごまかすものだ」と批判。額賀福志郎財務相は「計算上は、そういうようになる」と認めざるをえませんでした。(二月二十日の衆院財務金融委員会)
福田内閣は、「納税者である自動車ユーザー(利用者)の理解」を口実に道路特定財源の正当化を繰り返していましたが、この言い訳も論戦で打ち破られます。
穀田恵二議員は、安倍晋三前内閣のとき、「今や八割の世帯が自動車を保有しており、納税者は国民全体に及んでいる」と結論づけていたことを指摘。「議論は、すでに決着済みだ」と追及すると、首相はまともに答弁できませんでした。(二月十二日の衆院予算委員会)
そして、これらの論戦が進めば進むほど「一般財源化」を望む世論が高まりました。
「朝日」世論調査では、昨年十二月時点で一般財源化に「賛成」46%、「反対」41%。今年三月には、「賛成」59%、「反対」30%にまで拡大し、「納税者の理解」を口実にした政府の言い訳は通用しなくなったのです。
海峡道の調査中止に
道路特定財源に固執する政府・与党の狙いは、際限ない高速道路の新規建設にある―。日本共産党は、このことも「道路中期計画」に即して具体的に明らかにし、政府を追い詰めてきました。
穀田議員は、「道路中期計画」の中心が、バブル期に策定された一万四千キロの高速道路に加え、七千キロの地域高規格道路の建設を推進するものであることを暴露。さらに、地域高規格道路には、六本の海峡横断道路を含む百十の「候補路線」があり、「国土形成計画」の全国計画に位置付けられようとしていることも白日のもとにさらしました。(二月十二日の衆院予算委員会)
つづいて笠井亮議員が、この海峡横断プロジェクトに関する調査(六十八億円)が、国交省の天下りやゼネコン幹部が理事をつとめる「海洋架橋・橋梁調査会」に丸投げされていたことも暴露。(二月二十一日の衆院予算委員会)
政府も「今後は(調査を)行わないことを決断した」「候補路線を(計画路線に)格上げする際には国会にはかる」(冬柴鉄三国交相)と、異例の方針転換せざるをえなくなったのです。「調査会」自体も解散。三月末に予定されていた「国土形成計画」の閣議決定も先送りされています。
「野党の力」
三月三十日のNHK番組では、衆院の論戦を紹介した穀田議員に対し、与党幹部も、「ようやく本丸に手を入れよう、メスを入れようというところまで総理が決断された。それは野党のみなさんの力だと感謝している」(公明党の漆原良夫国対委員長)と述べるほどでした。
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