2008年4月3日(木)「しんぶん赤旗」

タクシー殺人逮捕状請求へ

日米の対応に批判


 神奈川県横須賀市でのタクシー運転手刺殺事件で捜査本部は二日、在日米海軍が拘束していた一等水兵(22)の逮捕状をとり、起訴前の身柄引き渡しを米側に要請する方針を固めました。

相互援助の定め

 在日米海軍は水兵を拘束した際(三月二十二日)の報道発表で、タクシー殺人事件の容疑者として拘束したのではないとしつつ、「水兵は殺人事件に関する情報を持っている可能性がある」と指摘。日本の警察当局への全面的な協力を表明していました。

 米軍・米兵の特権を保証した日米地位協定も、日米は「犯罪についてのすべての必要な捜査の実施並びに証拠の収集及び提出」で「相互に援助しなければならない」と定めています。(一七条六項<a>)

 事件の解明には、水兵から直接聴取することが欠かせませんでした。水兵が拘束されている横須賀基地に出向くことはもちろん、水兵の出頭を米側に求めるなど、日本側にはきぜんとした態度が求められました。

 ところが、日本側が横須賀基地に出向いて水兵の事情聴取を行ったのは、二日が初めてでした。米側にも、日本側の事情聴取を実現する積極的な姿勢はまったくみられませんでした。

引き渡し早期に

 日本側は、日米地位協定の刑事裁判権手続きに関する日米の「運用改善」合意に基づいて、水兵の起訴前の身柄引き渡しを米側に要請する方針です。

 地位協定一七条五項(c)は、公務外で罪を犯した米兵が基地に逃げ込むなどして米側が拘束した場合、日本側が起訴するまでは、米側が引き続き拘束を行うと定めています。

 しかし、一九九五年九月の米海兵隊員による少女暴行事件で、同条項を根拠に容疑者の身柄引き渡しを米側が拒否したことに批判が噴出。日米両政府は、殺人、性的暴行という凶悪犯罪について、日本側が容疑者の起訴前の身柄引き渡しを要請すれば、米側は「好意的な考慮」を払うという「運用改善」で合意しました。

 この合意は、米側の「好意的な考慮」、つまり米側の裁量任せという大きな問題があります。日本側の事情聴取などがもっと早く実現し、事件の解明が進んでいれば、身柄の引き渡しも早期に実現していたはずです。(榎本好孝)



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