2008年4月2日(水)「しんぶん赤旗」
東芝社員の労災認定
過労自殺 時間外労働月154時間
熊谷労基署
東芝の埼玉・深谷工場で働いていた技術職の男性(37)が過労自殺し、長時間労働が原因だとして妻が労災申請していた事件で、熊谷労働基準監督署が労災と認める決定を出したことが一日までに分かりました。
本紙が告発
代理人の川人博弁護士らが記者会見して明らかにしたもの。この男性がいた職場ではほかにも自殺したり、精神疾患にかかる人が相次いでおり、本紙は〇七年五月にその実態を告発していました。
この男性は、二〇〇〇年から液晶生産ラインの立ち上げプロジェクトに参画。午前八時に出社、深夜を過ぎても働きづめで、亡くなる前一カ月の時間外労働は百五十四時間にのぼっていました。
当時の深谷工場の時間外労働の労使協定では、三カ月百二十時間と定められていましたが、はるかに超えていました。
〇一年秋には朝会で工場長が「これからは土曜も日曜もないと思え」と訓辞し、男性は「工場長にはついていけない」と妻に漏らしていました。
同年十二月に自宅を出たまま行方不明となり、二十日に遺体で発見。「会社と逆向きに歩いていました。いつか来るかもしれないと思っていましたが、遂(つい)にその時になってしまいました」と書かれた遺書が残されていました。妻が〇六年に労災申請しました。
「妻の日記」
熊谷労基署は、妻の日記をもとに「一カ月あたり百時間前後の時間外労働が亡くなる半年以上前から恒常的に続いていた」と認定。過重労働が原因でうつ病にかかり、自殺したと判断しました。
認定を受けて妻は、「人間は機械ではありません。主人の死を無駄にしないためにも、東芝は労災認定をしっかり受け止め、労働環境の改善につなげていただきたい」と話しています。
この男性と同じ職場で働いて精神疾患にかかった重光由美さんは労災と認められず、休職期間の満了を理由に解雇されたため、解雇無効と労災認定を求める訴訟を起こしてたたかっています。
川人弁護士は「決定を受けて労基署は再発防止のため東芝に厳しい指導を行うべきだ。重光さんも労災として認定すべきだ」とのべました。