2008年4月2日(水)「しんぶん赤旗」

主張

核先制使用発言

核固執勢力を孤立させよう


 核兵器保有国の間で、核拡散への対処を口実に、核兵器の先制使用を容認する主張が続いています。核兵器廃絶への国際世論の強まりに直面して、核兵器の保有を正当化する核固執勢力のあがきといえる挑戦です。核兵器使用へのハードルを引き下げ、核戦争の危険を招きかねないきわめて危険な主張です。

イランの核疑惑を口実に

 フランスのサルコジ大統領は三月、イランの核疑惑がヨーロッパの安全保障を危機にさらしているとし、「核兵器による警告」との表現で、核先制攻撃もありうると主張しました。フランスの核兵器を「ヨーロッパ安全保障のカギ」として、核保有と先制使用戦略への欧州諸国の支持取り付けもはかっています。

 米国のシャリカシュビリ元統合参謀本部議長をはじめイギリス、フランス、ドイツ、オランダの各元参謀長も一月、核兵器の先制使用を北大西洋条約機構(NATO)の戦略にするよう提言しました。核兵器の先制使用は「大量破壊兵器を使用させないための究極手段でなければならない」と主張しています。

 米国は核兵器の先制使用を基本戦略としています。昨年七月に米国のエネルギー、国防、国務三長官が連名で出した声明は、米国の核兵器は同盟諸国にとって「安全保障の究極の保証」だとし、「北朝鮮とイランの核兵器計画は米国の世界の主要同盟国に対する安全保障の重要性を裏付けた」と述べています。

 核兵器の保有を正当化するこうした主張は、核兵器に固執する勢力が核兵器廃絶を求める国際世論の高まりに包囲され、孤立していることの表れでもあります。

 歴代米政権で核戦略の策定に深くかかわってきたキッシンジャー、シュルツ、ペリー各氏ら元高官らはいま、「核兵器のない世界という目標を現実の事業にする」ための国際的対話を呼びかけています。

 シュルツ元米国務長官は二月にオスロで開かれた「核兵器のない世界」をめざす国際会議で、「存命する米国の元国務、国防長官、国家安全保障問題担当大統領補佐官の四分の三は、私たちの努力を支持している」と述べました。

 全米科学者連盟(FAS)など三団体が二月にまとめた次期米政権への提言は、核廃絶に向けて、米国が「核兵器への依存を減らす一方的措置」をとるよう求めています。

 核固執勢力の主張は、核保有国に核の独占を許している核不拡散条約(NPT)が加盟国に核軍縮の努力を義務付けていること、その義務に基づいて核保有国が二〇〇〇年のNPT再検討会議で核兵器廃絶の「明確な約束」をしたことに、根本的に反しています。

 核兵器を「最終兵器」として有効だと正当化する核保有国の姿勢こそが、軍事を優先する諸国に核兵器を外国の干渉から自らを守る兵器と認識させ、核拡散を招いています。

核兵器廃絶こそが解決

 元米高官らも、核兵器の拡散と使用の危険を直視するからこそ、核兵器を廃絶しなければならないと主張しているのです。

 こうした世論は米大統領選にも影響を与えています。米民主党の指名を争うオバマ候補は、核抑止力論を擁護しながらも、NPT上の誓約を守るとし、「イランや北朝鮮に(核開発の)口実を与えるのはやめよう」と述べています。

 いまこそ核固執勢力を一段と孤立させ、核兵器廃絶に向けて前進することが求められます。



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