2008年4月1日(火)「しんぶん赤旗」
こんな社会でいいのか
高齢者差別の医療制度
怒りの中 きよう開始
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七十五歳以上の高齢者を強制加入させる後期高齢者医療制度が四月一日から始まります。対象者は約千三百万人。世界でも例がない高齢者差別の制度です。制度の中身が知られるにつれ、全国で怒りが噴出。野党四党が国会に廃止法案を提出するなど、制度への強い批判が広がるなかでのスタートとなりました。
後期高齢者医療制度は、二〇〇六年に自民、公明両党が強行した医療改悪法で導入が決まったもの。七十五歳以上は、全員が健康保険や国保(国民健康保険)などから追い出され、別枠の制度に囲い込まれます。六十五―七十四歳で一定の障害がある人も新制度の対象です。(制度に入るかどうかは選択制)
■高い保険料負担
新制度では、高い保険料負担が七十五歳以上のお年寄り全員にのしかかります。保険料は原則、年金から天引きされます。ほとんどの地域で、四月十五日に振り込まれる年金(二、三月分)から二カ月分(四、五月分)の保険料が引かれます。
これに便乗して、六十五―七十四歳の国保料(税)も、年金からの天引きが始まります。
年金額が月一万五千円より少ない人は、天引きではなく保険料を直接払います。一年以上保険料を払えず「悪質滞納者」とみなされると、保険証を取り上げられます。かわりに「資格証明書」が発行され、窓口での十割負担を強いられます。現在は禁止されている七十五歳以上の保険証取り上げが、新制度では可能になります。
■医療内容に格差
政府は、新制度が始まっても「七十四歳までと変わらず、必要な医療を受けることができる」と盛んに宣伝しています。しかし実際には、四月から七十五歳以上だけを区別した診療報酬(医療の値段)を導入します。七十五歳以上の人を(1)治療が長引き複数の病気にかかっている(2)認知症が多い(3)いずれ死を迎える―と定義。お年寄りを差別し、“安上がりで手抜き”の医療にされる危険があります。
四月から始まる新しい健康診査制度では、対象年齢を四十―七十四歳に限定。七十五歳以上は「努力義務」として、法律の上では対象からはずしました。国保や健保などで、加入者が死亡したときに支払われる「葬祭費」が、七十五歳以上になると減らされる問題もあります。“長生きへの罰則”そのものです。
制度を導入する狙いは、高齢者にかかる医療費を削減することにあります。厚労省は、二〇一五年に二兆円、二五年に五兆円の医療費削減を見込んでいます。いま七十五歳以上の人だけでなく、「団塊の世代」も狙いうちにしたものです。
■問い合わせ殺到
実施を目前にして、厚労省や自治体の担当窓口には、問い合わせや苦情が殺到しています。制度に反対する 署名は党派の違いを超えて広がり、中止・撤回などを求める意見書や決議をあげた地方議会は五百三十以上に達しています。
撤回求め全力 市田氏
日本共産党の市田忠義書記局長は三十一日の会見で、後期高齢者医療制度について、「たとえ実施されても、撤回を求めて全力を挙げる」と表明しました。
市田氏は同制度について「人間としての尊厳を否定するものだ」と厳しく批判。撤回に向けたたたかいの一環として四月一日に、志位和夫委員長を先頭に全国各地で街頭宣伝を行うことを明らかにしました。
そのうえで同制度の中止・撤回を求める自治体決議が全国で相次ぎ、署名も五百万人分を超えて集まっている状況を示し、「世論は沸騰している。こうした反対世論に依拠しながら、撤回・廃止を求めるたたかいを強めていく」と述べました。
4月からの主な医療改悪
◆後期高齢者医療制度がスタート
- 75歳以上の高齢者を健保や国保から追い出し、ほかの世代と切り離した保険制度に囲い込む
- 75歳以上のすべての人から保険料を徴収。年金額が月1万5000円以上の人は、保険料を年金から天引き
- 保険料滞納者からは保険証を取り上げ、資格証明書を発行
- 75歳以上だけを別建てにした診療報酬を設定し、必要な医療を制限する「差別医療」を導入
◆65−74歳の高齢者の国保料(税)を原則として年金から天引き
◆メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した新しい健診(特定健康診査)を実施。対象年齢は40−74歳に限定
◆療養病床に入院する65−69歳の食費・居住費の負担を増やす