2008年3月31日(月)「しんぶん赤旗」
年金記録問題 解決遠く
「3月末」の政府公約どうする
予算・体制強化は急務
国民の年金不信を一気に広げた、ずさんな年金記録管理問題。政府は「最後の一人まで責任を持って年金を支払う」と約束しました。しかし、解決の目安とされていた三月末を迎えた今も、対策は遅々として進んでいません。(坂井希)
年金記録問題が争点となった昨年七月の参院選で、政府・与党は「最後のお一人に至るまで…正しく年金をお支払いしていく」(安倍晋三前首相)などと繰り返し言明。「三月末までに確実に名寄せを完了させます」とも宣伝したため、多くの国民は三月中には年金記録問題が解決されると期待していました。
浮いた年金
統合8%だけ
ところが、現実はお寒い状況です。今月十四日、社会保険庁は「宙に浮いた」五千九十五万件の年金記録のうち、二千二十五万件(39・7%)が特定困難であることを明らかにしました。
この衝撃的な数字以上に事態は深刻です。これまで基礎年金番号に統合できたのは四百十七万件(8・2%)。すでに死亡一時金や脱退手当金などを受給し、新たな給付に結びつかないと考えられる記録は六百四十八万件(12・7%)です。
これらを除いた約八割は、今後解明が必要なものですが、めどは立っていません。
千百七十二万件(23%)は記録の持ち主とみられる人が見つかり、約千三十万人に「ねんきん特別便」が送られました。しかし、記述の分かりにくさもあり、記録訂正の申し出は約三十三万人にとどまっています。記録が結びつくはずなのに「訂正なし」と回答した人が多く、社保庁職員が電話や訪問で確認せざるを得ない状況です。
三百四十一万件(6・7%)は、すでに死亡している人などの記録です。遺族が受給できる可能性はありますが、遺族は「特別便」の対象でないため、支給漏れになる恐れがあります。
四百九十二万件(9・7%)は記録が重複していると考えられるもので、これらも持ち主の調査には時間がかかります。
社保庁は四月から十月にかけて、すべての年金受給者・加入者(約一億人)に「特別便」を送ることにしています。国民の協力を得ると同時に、政府として、人も予算も十分にとり、解決に向けた体制を確立することが急務です。
時効の撤廃
申請は1割強
年金時効特例法(二〇〇七年七月六日施行)により、「宙に浮いた」年金記録が見つかった場合、過去五年よりもさかのぼって全期間分を受け取れるようになりました。
昨年末までに支給が決定されたのは一万七千百十四人。平均年齢は七十六歳(最高百一歳、最低六十三歳)でした。支給決定金額は総額百三十四億七千四百八十九万円で、平均は七十八万円(最高二千八百二十三万円、最低十九円)でした。
しかし、こちらも十分進んでいません。社保庁は時効撤廃により、約二十五万人に約九百五十億円を支給する見通しを立てていました。しかし、手続きをした人は三月二十三日時点で二万九千三百六十四人と一割強にすぎません。高齢の受給者も少なくないだけに、対策が急がれます。
消えた年金
処理9割まだ
年金保険料を払ったのに社保庁に記録がなく、領収書もないといった「消えた年金」の解決はどうか。これらのケースを審査する「年金記録確認第三者委員会」の作業も滞っています。
三月十一日までに四万五千六百件の申請を受け付け、千八百三十二件(4%)について納付事実を認めました。訂正不要とした件数は千九百十六件(4・2%)、申請取り下げが四百二件(0・9%)で、計四千百五十件(9・1%)が処理済みです。
物証がないため、証言探しなどに多くの手間がかかっているのが実態です。社保庁は週当たりの処理件数を現在の四件から五―六件に、審議チーム数を百十八から百六十八に増やし、ペースを上げたい考えです。
年金記録問題の解決がほとんど進展しないにもかかわらず、政府は二年後の二〇一〇年に向けて社保庁の分割・民営化を急いでいます。しかし、いま社保庁を解体することは、年金記録問題の責任までも「消して」しまうものです。
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