2008年3月31日(月)「しんぶん赤旗」
7万人、無保険の恐れ
後期高齢者医療 健保の扶養家族
七十五歳以上を対象にした後期高齢者医療制度が、四月一日から実施されます。それにともなって、現在、被用者保険(組合健康保険など)に入っている七十五歳以上の人の扶養家族のなかから、無保険になる人が大量に生まれるおそれがあります。厚生労働省によると、対象者は全国で約七万人にのぼると推計されています。
後期高齢者医療制度では、七十五歳以上の高齢者全員を新制度に強制加入させます。「健保に加入する夫が七十五歳以上で、扶養家族の妻が七十四歳以下」などの場合、夫は後期高齢者医療制度、妻は国民健康保険と、別々の医療保険に“別居”させられます。
その際、夫は手続きをしなくても自動的に新制度に組み込まれます。しかし、妻は自ら健保組合などに「資格喪失届」を出さないと、国保には入れません。自分で手続きをしなければ、四月一日以降、どこの保険にも入っていない「無保険者」になってしまいます。
国の勝手な制度改悪によって、国民が不利益を受けることになるにもかかわらず、政府は手続きが必要なことを加入者に知らせていません。制度を説明した政府広報(二十日配布)でも、まったくふれていません。
厚労省保険局は「市町村のパンフレットなどに記載しているところもあると思う。七十五歳以上の人は、今までの保険証を市町村に返すことになっているので、そのついでに国保加入の手続きを確認すればいい」と説明しています。自治体や高齢者まかせの無責任な姿勢です。
農機具販売会社で働く東京都の男性(76)は現在、健康保険に加入し、妻(72)は扶養家族です。昨年末、「しんぶん赤旗」日曜版の記事で初めて後期高齢者医療制度のことを知って、妻のことが不安になり、市役所に問い合わせました。市の回答は「そのうち保険証が届く」というものでした。しかし、実施目前の三月二十三日に届いたのは、男性の保険証だけでした。
翌日、男性が市役所に電話すると、「今加入している健康保険に資格喪失届を出さないと、国保の加入は受け付けられない」という返事です。すぐに社会保険事務所や厚労省に問い合わせ、あわてて手続きをしました。二カ月に一回通院している妻は、四月一日に診察の予約を入れてあり、あやうく保険証が使えなくなるところでした。
この男性は「私は四月からも今まで通り働き続けるのに、健康保険は勝手に七十五歳で線を引いて、出て行けという。国が追い出しておきながら、十分に知らせもせず、自分で手続きをしないと無保険になってしまうとは、ひどすぎる」と語っています。