2008年3月30日(日)「しんぶん赤旗」
米軍「思いやり予算」初の空白
「誰のせいか米に見てもらわないと…」
おびえる政府・与党
在日米軍への「思いやり予算」に関する現行の日米特別協定の期限が三月末に切れ、失効します。政府・与党は、現協定に代わって三年間延長する新協定の国会承認を急いでいますが、間に合わないことが確定。「思いやり予算」に関する特別協定に空白期間が生じる初めての事態です。
完全に不可能
「思いやり予算」は、基地の提供以外の駐留経費は米側が負担することを定めた日米地位協定にも違反するものです。
一九七八年度から始まりましたが、米側の度重なる負担拡大要求に応えるためには、地位協定で説明がつかなくなり、八七年からは期間を限定した特別協定を結び、支出してきました。二〇〇八年度予算では、二千八十三億円を計上しています。
今回の新特別協定は、今年一月に高村正彦外相とシーファー駐日米大使が署名したものです。
この新協定を政府が衆院に提出したのは二月五日でしたが、与党が衆院で〇八年度予算案の採決を強行したことに端を発した国会空転などの事態を受け、審議が始まったのは今月十八日の本会議からでした。
同特別協定を審議している衆院外務委員会の理事懇談会(二十八日)で、四月二日の委員会質疑、採決の日程を決めたことから、月内国会承認が完全に不可能になりました。日本共産党の笠井亮議員は、特別協定の徹底審議を求める立場から、二日の採決日程に反対しました。
ただ特別協定は、労務費や光熱水料を日本側が負担する期間について、〇八年度から三年間と明記しており、発効が遅れても、この期間分を日本側が支払うことに変わりはありません。
危機感あらわ
それでも政府・与党は、今回の事態に危機感をあらわにしています。
高村外相は、国会承認が遅れることについて「米国の日本政府に対する信頼が損なわれる」「日米関係が堅固であると世界に発信する、そのことが一番大切だ」(二十六日の衆院外務委員会)と表明。期限切れが確定した二十八日の記者会見でも「米国において(日本の)信頼を減ずることは間違いない」と繰り返しました。
先立つ二十五日の外務委員会の理事懇談会では、与党側から、“だれが特別協定の承認を遅らせているのか、米国に直接見てもらう必要がある。外務委員長から委員会の質疑を傍聴してもらうよう米大使館に要請すべきだ”という発言まで飛び出しました。承認を遅らせた責任は、与党ではないと米国に分かってもらおうというわけです。
もともと「思いやり予算」を日本側が負担しなければならない義務は、どこにもありません。
にもかかわらず、米国におびえる政府・与党の動揺ぶりからは、「米国いいなり」が骨の髄まで染み付いている姿がうかがえます。
(田中一郎)
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