2008年3月26日(水)「しんぶん赤旗」
主張
福田政権半年
路線の固執が行き詰まり招く
福田康夫氏が政権を発足させて、二十六日で半年になります。
参院選挙での惨敗のあと進退きわまって政権を投げ出した安倍晋三首相のあとを受けた政権ですが、発足時には内閣支持率も60%を超していました。ところが半年の間に支持率は政権の“危険ライン”といわれる30%を割り込むほどに下落しました。日銀の総裁人事では戦後初の空白を招き、道路問題でも年度内の法案成立のめどが立ちません。政権としての行き詰まりは深刻です。
実行すべき中身が問題
ことは福田首相の指導力や実行力が乏しいなどといったことにとどまりません。首相が実行しようとしている政策の中身そのものが国民の批判を広げ、矛盾を拡大しています。
日銀の後任総裁問題では、武藤敏郎副総裁の総裁昇格が参院で否決されたあと、首相自身が田波耕治元大蔵事務次官を持ち出したことが、反発を広げました。日銀総裁には衆参両院の同意が不可欠で、基本的に各党が賛成できる人選でなければならないのに、野党の支持を得られない人事に首相が固執したことが、行き詰まりの原因です。
道路問題の国会審議でも同様です。これまでの審議で、ガソリンなどへの税金を道路特定財源とし、割高な暫定税率を今後十年間も続け、五十九兆円もの道路建設を続けるという計画に何の根拠もないことが浮き彫りになっています。首相がそれにもかかわらず計画を変えず、年度末ぎりぎりになって示した「修正」の指示でも、まず法案は年度内に成立させると固執していることが、混乱の一番の原因になっています。
マスメディアの世論調査でも、道路特定財源を一般財源化すべきだという意見や、道路計画の見直しを求める意見が圧倒的です。首相が当初示した道路財源の「全額一般財源化」のことばさえ、与党案ではなくなりました。福田政権が国民の声に背を向けていることこそ、打開のめどが立たない最大の原因です。
福田首相は就任以来、安倍首相が掲げた「美しい国」や「戦後レジーム(体制)からの脱却」のスローガンは引っ込めたものの、アメリカ・財界いいなりの政治の基本路線については、いっさい転換する意思を示さないまま過ごしてきました。
アメリカの戦争を支援するため、インド洋での自衛艦による給油を再開する法案を成立させようと越年国会などの無理を重ね、大企業の利益優先の「構造改革」路線を続けて福祉予算の削減や消費税大増税に踏み出そうとしているのもそのためです。
昨年の参院選で自公勢力が大敗し、安倍政権が崩壊しても、これまでの政治の基本路線を一歩も出ようとしない福田政権のやり方では、破たんが避けられないのは明らかです。世論調査では、この半年間の福田内閣の実績が「評価できない」が64%を占めます(「読売」二十四日付)。政権の行き詰まりは、みずから招いた結果というしかありません。
基本路線の転換こそ
行き詰まった自民党の政治を変える方途は、アメリカ・財界いいなりの政治の基本路線を根本から転換することでしか開かれません。
見過ごせないのは、福田政権がこの転換を拒否するばかりか、改憲と消費税増税を押し通すことをねらって、民主党との「大連立」を画策し、「政界再編」の動きに期待をかけるなど、行き詰まりを反動的に打開する動きを続けてきたことです。政治の転換を求め、こうした自民・民主の動きにきびしい警戒が必要です。