2008年3月25日(火)「しんぶん赤旗」
主張
タクシー殺人
脱走米兵の聴取が欠かせない
神奈川県横須賀市でおきたタクシー運転手刺殺事件で警察は、米海軍が脱走の疑いで身柄を確保している米兵からの事情聴取が可能か、米海軍に打診しているといいます。
基地のある街で米軍犯罪が多発しており、国民の不安が募っているなかで今回の事件がおきました。米兵がかかわっているかどうかは、基地のある街にとって重大問題です。事件の解明には米兵からの直接聴取が欠かせません。横須賀基地に出向いて事情をきくだけでなく、米兵の出頭要請も必要です。警察当局は、きぜんとした態度で米軍との折衝にのぞむことが求められます。
米軍犯罪多発のなか
運転手の高橋正昭さんの刺殺体が見つかった車内には、首を刺した包丁のほか、米兵名義のクレジットカードが残されていました。米兵が関与した可能性は否定できないというのが警察の見方です。米側によれば、米兵は事件との関与を否定しているといいますが、それですますわけにはいきません。
脱走米兵がでたことを米側が日本に知らせていなかったのは重大です。事件に関与したと疑われている米兵は三週間もの間、基地に戻らず、脱走した疑いで米軍が捜索していた者です。犯罪防止のうえでも日本側に知らせるのが筋です。
二月の沖縄での米兵による女子中学生暴行事件のあと、米軍は「遺憾」を連発し、「反省の日」をつくり、夜間外出規制や米軍教育内容の改善など、犯罪の再発防止にとりくむと約束していたはずです。数週間も基地に戻らず、米軍が脱走と疑っているのに、日本側にそのことを知らせないこと自体、犯罪の再発防止は口先だけとしかみられません。
米兵が脱走したかどうかは米軍内部の問題です。しかし、基地外で米兵が野放しになっていることは、日本国民にとって恐怖です。米軍犯罪を真剣に反省するというなら、早くその情報を日本側に知らせ、市民に注意を呼びかけることを優先するのが当然です。事件発生の翌日になって、横須賀市にこの脱走兵が事件に関与した疑いがあると連絡してきたのは、犯罪の再発防止の約束が軽視されていることのあらわれです。
事件がおきたあと、米海軍横須賀司令部は、米兵事情聴取に協力するといっていますが、具体的なことは日本側の要請待ちになっています。米兵が関与を否定しているというなら、警察署に出頭させるなどの積極的対応をするべきです。それは米軍地位協定にも根拠のあることです。
地位協定一七条は、日米の当局は「犯罪のすべての必要な捜査の実施…」について「相互に援助しなければならない」と規定しています。日本の要請を待つまでもなく、米兵を出頭させ、関与のあるなしを説明させることは米側の義務でもあるのです。日本からの要請がなければ動かないという、日本を見下すような態度はやめるべきです。
基地撤去求めるとき
横須賀市では二〇〇六年一月、空母キティホークの乗組員が横須賀市内で女性にひどい暴行を加え殺害した事件があったばかりです。沖縄では女性暴行事件をはじめとした凶悪犯罪があとをたちません。在日米軍はすべて海外の不法な戦争のさいの“殴りこみ部隊”であり、それが日本での犯罪を多発させている背景にもなっています。米軍が駐留する限り、米軍犯罪はなくなりません。
米軍犯罪をなくすには、米軍基地の縮小・撤去の問題を避けて通ることはできません。
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