2008年3月24日(月)「しんぶん赤旗」
主張
思いやり特別協定
米軍事戦略への財政的応援だ
国民には冷たい仕打ちを続けながら、アメリカには「思いやり」と称して在日米軍駐留経費の一部を負担する。こうした「思いやり」予算が始まって三十年になります。
思いやるなら米軍より国民をと、思いやり予算への批判が広がっているのに、政府は、米軍地位協定二四条に関する特別協定を三年間延長しようとしています。
義務のない屈辱的負担
この三十年間に思いやり予算の対象は拡大を重ね、米軍人の給与以外、すべてを日本が負担しています。来年度の思いやり予算は、特別協定分千四百十六億円を含めて二千八十三億円です。SACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意分百八十億円、米軍再編経費二百三十九億円を含めた来年度の在日米軍駐留関係経費の総額は約六千二百億円にもなります。
米軍機保護用のシェルター建設から、横須賀基地に原子力空母を配備するためのしゅんせつ、“殴り込み作戦”用の上陸用舟艇(LCAC)の整備基地建設など、戦闘と不可分の施設整備まで日本が負担するようになっています。日本は憲法で戦争を放棄しています。国連憲章にも反した米軍の先制攻撃戦争の能力維持・強化のために、血税を使うなど許されるはずはありません。戦闘力を強化するための米軍訓練費の負担など論外です。
超豪華な米軍家族住宅も批判の的です。池子住宅地区(神奈川県)では、地代抜きで一戸当たり七千八百万円、横須賀基地でも約六千万円です。思いやり予算への反発は広がるばかりです。
日本人従業員の給与負担では、バーテンダーや宴会係、動物世話係まで含んでいます。米兵の遊興のために血税を使うなどもってのほかです。メスを入れる必要があります。
思いやり予算とされるものは、米軍地位協定上、米軍の義務です。地位協定二四条は、米軍維持に伴う「すべての経費」は「合衆国が負担する」と明記しています。いくら特別協定の形をとっても、日本人従業員給与などの負担が地位協定に反することに変わりはありません。
政府は特別協定分の「一定の削減」を誇ります。光熱水料を三年間で八億円削減したことを指します。しかし、百億円の削減をめざしたはずなのに、米軍から一蹴(いっしゅう)され、そのまま引き下がったことには口をつぐんだままです。
見過ごせないのは、思いやり予算を若干減らす代わりに、巨額の米軍再編経費を国民に押し付けようとしていることです。
米軍再編経費は、ローレス国防次官補(当時)も認めたように、三兆円が必要です。国民の反発は必至です。思いやり予算を少しばかり減らすことで、国民の支持をとりつけることをねらっているのは明白です。
在日米軍はすべて先制攻撃戦略にもとづく“殴り込み部隊”です。「日本防衛」とは無縁です。米軍は、思いやり予算で浮く予算を戦争に回します。戦争を助長する思いやり予算は廃止するしかありません。
国民をこそ思いやれ
高村正彦外相は、特別協定による負担が米軍の「福祉」に寄与するとのべました(十八日衆院本会議)。社会保障費を毎年二千二百億円も削り、国民福祉を深刻な事態にしているというのに、米軍の福祉が大事だというのは、本末転倒です。思いやるべきは日本国民です。思いやり予算を全額廃止し、社会保障にまわし、海外派兵を本格化する五兆円もの軍事費にもメスを入れるべきです。
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