2008年3月23日(日)「しんぶん赤旗」
同じ本土業者が建設
基地外の米兵マンション
米軍基地跡の超高層ビル
新たな「米軍利権」に群がる
沖 縄
沖縄で米海兵隊による少女暴行事件の犯行現場となった米兵向け基地外住宅。北谷(ちゃたん)町で建設中の県内最大級の米兵向け大型マンションと、那覇市の新都心で「首里城を見下ろす歴史的景観と環境を壊す」として反対の声があがっている超高層ビルがいずれも同じ本土の大手マンション業者によるものであることが本紙の調べで分かりました。(山本眞直)
北谷町の米兵向けマンションは町の北側の砂辺地区で建設中の八階建て二棟。建設地は同町で唯一残された東シナ海の砂浜が広がる海岸べり。
砂辺海岸は一九四五年四月一日、米軍が最初に上陸した場所。県民二十万人余が犠牲になった地上戦の先端を開いた地として、戦争の残酷さと平和への決意をこめた記念碑があります。
地元の砂辺自治会は「もう基地外基地は要りません」と反対しています。松田正二自治会長は「美しい砂辺の海岸が彼らのプライベートビーチ(専用海岸)になってしまう」と不安の声をあげます。
北谷町には、約千二百世帯の基地外米兵住宅が町の調査で確認されています。多くは県内の不動産業者らが経営しており、大手本土業者の本格的な進出は今回が初めて。米兵向け住宅は民間施設でも「家賃は米軍から直接振り込まれるので効率的」(地元業者)。
建設主は横浜市のみなとみらいに本社がある株式会社ランド、施工は大手ゼネコンの熊谷組が進める「北谷プロジェクト」。
ところが、不動産登記簿によれば土地の所有権は、ランドから昨年五月に「ライオンズマンション」で知られる大手マンション業者の「大京」(本社東京、資本金二百七十億円)に移りました。ランドは「大京さんは共同事業者」(経営企画部)と説明。大京は「北谷の物件は投資家向け賃貸マンション。米軍向けも選択肢の一つ」(広報部)としています。
ランドの経営陣は元大京関係者。都市計画の開発許可を申請した業者も元大京関係者です。
大京は那覇市で「景観と環境を破壊する」と地元で反対運動が起きている米軍基地跡地の新都心地区で県内最高階の三十四階、百三十六メートルの超高層ビル建設の「共同事業者」。相手は住宅最大手メーカーの大和ハウス工業(大阪市、資本金一千百億円)と、小泉政権のもとで公有地の民間売却など都市再開発での“規制緩和”を主導した宮内義彦氏のオリックスの100%子会社、オリックス・リアルエステート。オリックスは、大京の四割の株を取得しています。
超高層マンションの建設地は、那覇市が庁舎建設予定地として取得したもの。
同市は住民の反対を押し切って超高層ビルが建設可能な用途地域に変更、周辺地の時価相場よりも大幅に低い価格で売却しました。
大和ハウスは防衛省が開いた東京と大阪での在沖海兵隊のグアム移転企業説明会のいずれにも参加するなど、米軍利権に熱心。オリックス、熊谷組は、都内での説明会に参加しています。超高層マンションの建設受注を予定している県内大手の国場組は東京での説明会と米海軍によるグアム現地での企業説明会に参加しています。
グアム移転は総額一兆二千億円の“ビッグプロジェクト”。その大半、七千億円は日本の税金で負担します。
世界に例のない「思いやり予算」で居座る米軍向け住宅や環境破壊の「街づくり」で進出する大手企業グループ。日本の税金が投入されるグアム移転をも視野にした新たな「米軍利権」に群がる構図が見えてきます。
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