2008年3月23日(日)「しんぶん赤旗」
主張
学力テスト
競争への駆り立てをやめよ
全国学力テストが来月二十二日に実施されようとしています。昨年につづき二回目です。
なぜ全国テストをおこなうのか。大義名分はすでに崩れています。
崩れた国の大義名分
文部科学省は、全国テストは学力状況を分析するために必要だといってきました。しかし昨年のテスト後、数十億円をかけて明らかになった分析結果とは、「基礎はできているが応用が不十分」など、抽出テストでもわかることばかりです。
文科省は、子ども一人ひとりへの指導に役立てるともいいました。ところが試験結果は半年後に、答案ではなく、○×(マルバツ)がわかるだけの「個票」が返されただけです。業者まかせの採点ミスがあいつぎ、別の生徒の結果が返されたケースもありました。
地方の教育関係者から「あまり意義が見いだせない。できることならやめたい」の声もでています。今からでも中止し、六十二億円の予算は教育条件の向上にまわすべきです。
重大なことは、全国テストが学校現場を点数競争にかりたてる歯車として動き始めていることです。これこそ自民党や財界のねらいです。
点数が低かった市町村教育委員会は県教育委員会におこられ、点数が低かった校長は市町村教委におこられ、教員は校長におこられる―そんな光景が見えてきます。上位の自治体も「順位が下がったら困る」と対策に走ります。競争の激しい地域では不正工作までおこなわれました。
点数競争はさいごに子どもにのしかかります。入学式のあともテスト、宿題の量が極端に増えた、授業がドリルや反復練習中心になるなど、テスト対策への傾斜が、少なくない地域で始まっています。
「全国テストにむけたテスト練習でむつかしくて泣き出す子もいた」「県のテスト、市のテスト、国のテスト。テストばかりで面白くない」「勉強だけでなく、縄跳びは何級、水泳は何級って比べられる。学校は怖いかんじ」。子どもたちの声は、学力テスト体制への警鐘です。
学習の内容から深みが消え、子どもの意欲を後退させ、学習が遅れがちな子どもをおいてきぼりにする。学力テスト体制は、学力向上どころか、学力を後退させる元凶です。
子どもが自ら学びだす時、それは子どもが人間として安心できる空間にいる時です。「なぜこうなるのか」「現実の世界とどう関係しているのか」など自らの関心にこたえる学習ができる時です。学ぶことは孤独なものでなく、みんなで教えあい助け合いながらすてきな人間関係をつくることだと実感できる時です。
こうした学習をすべての子どもに保障することこそ、公教育の使命ではないでしょうか。教育行政はそのために、学校・教員の自主性を保障し、少人数学級などの条件整備で支えることが仕事です。
本当の知育のため共同を
この方向は、日本や世界における優れた教育に共通しています。競争をやめて「学力世界一」となったフィンランドは、その一例です。
自公政権は、全国学力テストを「新学習指導要領」や国の「教育振興基本計画」に盛り込んで、ずっと続けようとしています。
日本共産党は全国学力テストの中止・不参加を求めます。教育委員会や学校は、子どもをおいつめるような結果公表やテスト対策に走るのではなく、子どもたちの本当の知育をすすめる、教育者らしい努力をかさねることをよびかけます。