2008年3月18日(火)「しんぶん赤旗」
主張
福祉人材不足
介護の支え手の待遇改善急げ
新年度の四月を目前にしても職員確保のめどがたたない―各地の事業所が悲鳴をあげています。高齢者介護や障害者福祉の現場はいま、「将来に希望がもてない」などと年間で五人に一人が離職し、深刻な人材不足に陥っています。介護福祉専門学校では入学希望者が激減し、閉校になったところさえ出ています。
「官製ワーキングプア」
深刻な人材不足は福祉労働者のあまりにも劣悪な労働条件が原因です。若者が福祉の仕事を選ぶ動機は「やりがいがある仕事だから」がトップで六割にのぼります(厚労省調査、二〇〇四年)。ところが月給は平均二十二万七千円で全産業の六割程度にすぎず、若年者の多くは年収二百万円未満です。専門性を必要とする仕事でありながら、非正規の職員は介護で約四割、訪問介護では約八割にのぼります。くわえて夜勤や長時間の過酷な労働です。
介護や福祉の支え手が劣悪な労働条件に置かれているのでは、支えられる高齢者や障害者の尊厳を守ることはできません。
こうした事態になったのは、自民・公明政権が介護保険法を改悪(〇五年六月)し、二度にわたって介護報酬を引き下げ、また障害者自立支援法を強行成立(〇五年十月)させて支援費報酬を大幅に引き下げたためです。「構造改革」による社会保障費抑制路線の破たんをしめすものです。
日本共産党は昨年末、「国民の願う高齢者介護・障害者福祉の実現を―深刻な人材不足を打開するための緊急提言」(〇七年十二月二十五日)を発表しました。福祉労働者の劣悪な待遇を緊急に改善するために、国の責任で月三万円の賃金アップを全額公費で実施することを提案しています。政府が〇九年度に予定している介護・支援費の報酬改定を〇八年度から前倒しして実施することも提起しました。
国は昨年八月、「福祉人材確保指針」を十四年ぶりに改定し、給与改善にあたって「国家公務員の福祉職俸給表を参考にすること」と賃金水準の引き上げをはかる指針をしめしました。経営者まかせにするのではなく、国が率先して打開策を講じるべきです。
日本共産党は、介護・障害者支援の報酬を引き上げても、国民、利用者の負担増にはねかえらないよう、介護保険では国庫負担を増やして保険料と利用料の負担を軽減する、自立支援法では「応益負担」制度を廃止することを提案しています。この点も重要なポイントです。
日本共産党が「緊急提言」を発表したのにつづき、民主党が今年一月初め、「介護人材確保法案」を国会に提出するなど、福祉人材問題は政治問題にもなってきました。
自治体でも、介護の人材不足解決のために事業所のパート職員の賃金アップや住宅手当の助成を四月から実施する(東京都千代田区)などのとりくみが始まっています。
国の責任で財源保障を
福祉労働者の月三万円の賃金アップに必要な財源は、漁船に衝突・沈没事故を起こした海上自衛隊のイージス艦二隻分でまかなえる額です。消費税の増税など必要ありません。地域に介護や福祉の事業所が充実すれば、雇用が生まれ、地域経済再生にも大きな力になります。
日本共産党は、各地で広がる関係者の運動と連帯し、深刻な人材不足の危機を打開し、国民の願いにこたえる介護・福祉を実現するために全力をあげます。