2008年3月17日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

グッドウィル労災隠し

被害青年の告発

指骨折でも労働「強要」「仕事行けなくなるぞ」


 違法な二重派遣や港湾運送業務への派遣を行っていたなどとして、全事業所を対象に2―4カ月の事業停止命令と事業改善命令が出されている日雇い派遣大手のグッドウィルで、今度は「労災隠し」が発覚。被害を受けた若者が怒りの告発をしました。(竹原東吾)


34%ピンはね

地図

 グッドウィル都城支店(宮崎県)の登録スタッフとして、日雇い派遣で働いていた川上和一さん(29)=仮名=です。左手薬指のツメは、半分がはがれおち、肉は硬く厚みを増していました。

 労災が発生したのは昨年12月17日午後6時ごろ。コメ袋の積み下ろし作業でコンテナを閉める際、川上さんはロックと扉のかみ合わせ部分に指をはさみました。ツメがつぶれ、骨折。内出血であずき色に変色した左薬指は、親指ほどにもはれ上がったといいます。

 川上さんの仕事は、コンテナ内のコメ袋をパレットに積み下ろしする作業でした。コメ袋は1つ約30キロ。コンテナ1基分約160俵を、1人でパレットに積み下ろすという過重な労働です。

 平らに10袋をならべ、それを8段積むと1パレット。2パレットでようやくコンテナ1基分のコメを積み終わります。1日平均でコンテナ25基、多い日は47基にもなりました。グッドウィルから派遣された日雇い労働者5人ほどで朝から晩まで積み下ろし。腰痛をわずらいコルセットを着けながら就労する人もいたといいます。

 時給は690円。労災発生当日の川上さんの「日給領収伝票兼日雇雇用契約書」によると、午前7時半から午後6時半まで働き定時賃金が5520円。残業2時間分で1726円がついて7246円です。

 重労働に比べ驚くほどの低賃金です。川上さんによると、派遣先からグッドウィルに支払われる1人当たりの時給は本来は「1048円」。時給の34%、実に358円がグッドウィルに「ピンはね」されていました。

事務所で暴言

 労災当夜は痛みで眠れず翌朝4時、夜間医療救急センターに駆け込み、骨折が判明。救急センターで3800円、整形外科で6880円、合計1万680円の医療費を支払いました。グッドウィルの女性職員から「労災が適用されるので領収書を取っておいてください」と言われ、川上さんは「この時は安心しました」。ところが――。

 医療費の支払いを求めグッドウィルの事務所に立ち寄った際、内勤の男性職員の暴言に驚きました。「労災を使ったら(グッドウィルに)仕事がこなくなる。お前も仕事に行けなくなるぞ」

 仕事を盾に労災を「隠そう」としたばかりか、労働の「強要」まで…。川上さんはこう証言します。「大丈夫やろうが、頑張れるやろうがと、遠まわしに『働け』と言われました。僕は、その日暮らしで生活していかないといけない。仕事がなくなると言われ、仕方ないと思って…」

 連日の日払いで、よくて月に15万円になるかどうか。親名義の部屋に1人暮らしで家賃はかからないものの、光熱水費、仕事に行くために不可欠となる車の燃料費などの出費で、生活は「ぎりぎりでした」。骨折の痛みに耐えながら続けたコメの積み下ろし作業。日雇い派遣のため、時に1週間も仕事を干されながらも働きました。

労基署に相談

 2カ月が過ぎ、医療費の不安で1度も病院に通えず、グッドウィルの不誠実な対応に不満と憤りが募った川上さんは、兄に相談。事件の重大さに驚いた兄から労働基準監督署への相談をすすめられました。2月8日、労基署から労災番号を聞きだし、手続き。現在は通院しています。リハビリを続けていますが、「今でも(指が)しびれ、触っても感覚がない」と、後遺症を懸念します。

 同時期、川上さんは労働組合などにも相談・助言をうけ、賠償金や休業補償などを求める「通告文」も送付しました。

 これを受け、グッドウィルがしぶしぶ「謝罪」したのは2月13日。川上さんによると、支店長と九州統括部長が肩をいからせながら川上さん宅を訪問。「ふてぶてしい態度で、いやいや頭を下げにきた感じだった」といいます。

 その横柄な態度もテレビ・新聞で「労災隠し」が報道されると一変。「指はどうですか。ツメもはがれたんですよね。後遺症が残ったら後遺症(の治療)代もつけますから」と、突然の気づかいをみせてきたといいます。一方でいまだに、誠実な謝罪はなく、「派遣先に迷惑がかかるから…」などと顧客である派遣先を気づかう言動をろうしているともいいます。

 川上さんの憤りはおさまりません。「まずはちゃんとした謝罪をしてもらいたい。(補償や賠償は)それからです。グッドウィルで働く人に同じこと(労災隠し)をされたくないし、僕で終わりにさせたい。『仕事に行かせてもらえない』という不安で、違う人が(労災にあっても)また泣き寝入りしてしまうから」

不適切と認識

 本紙の問い合わせに対するグッドウィル広報室の回答 今回の事故で被災されたスタッフの方へ心よりお見舞い申し上げます。今後はスタッフの方への誠意ある対応に努めてまいります。今回の労災事故対応について、事故後の支店での対応・取り扱いにつきましては、明らかに不適切であったと認識し、反省いたしております。再発防止のために、社内管理体制、確認体制の整備に努めてまいります。今回の関係者につきましては、弊社規則に従い厳正に処分してまいります。


お悩みHunter

東京での一人暮らし自信ないんですが…

  志望大学への入学が決まり、喜びの半面、不安も感じています。東京での一人暮らし、大丈夫かしら、友人ができるかしら、授業についていけるかしら、いろいろ考えるとだんだん自信がなくなってきます…。(18歳、女性)

自分を振り返ってみて

  志望校への入学、良かったですね。

 ホッと一息ついてみると、不安や心配が次々にわいてきたのですね。その気持ち、よく分かります。でも、「来年は志望校に合格できるかな? 受験勉強、1年間も耐えられるかな? 東京での浪人生活大丈夫かな?」などという浪人生の不安に比べたら、うれしい心配かもしれませんね。

 とは言っても、あなたは、「さア、今のうちに遊ぶぞ、車の免許とって、バイトするんだ」などと元気よく外に飛び出していく活動的なタイプではなさそうですね。本当に誠実で堅実なのだと思います。おとなから見ると、安心してまかせられるタイプなのでしょう。現在の自分に決して満足しないで、いつも一歩先のことを考え、自分を前進させようとする努力家ではないでしょうか。だからこそ、恵まれた場面でも、逆に頑張らなければというプレッシャーがかかるのかもしれませんね。友達をつくり東京暮らしを充実させたい、授業もしっかり受けたい―そんな目標を掲げるからこそ「大丈夫かな、やっていけるかな?」と不安が頭をもたげるのです。ある意味では前進のための不安とも言えます。

 でも、これまでのあなたの18年間を振り返ってみてください。あなたはこんな不安や心配をバネに、ここまで歩んできたはずです。そんな自分をいつくしみ、ほめてやってください。大丈夫ですよ。


教育評論家 尾木 直樹さん

 法政大学キャリアデザイン学部教授。中高22年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。


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