2008年3月17日(月)「しんぶん赤旗」
公開前映画「YASUKUNI」に「靖国」派圧力
文化庁通じ自民・稲田衆院議員 「見たい」
靖国神社をテーマにしたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」(四月十二日から公開、李纓監督)の衆参国会議員向け試写会開催(今月十二日)の経緯の中で、日本の侵略戦争を正当化している「靖国」派国会議員による圧力があった問題が浮上しています。検証しました。
試写会は同映画の宣伝・配給会社「アルゴピクチャーズ」の主催(協力・文化庁)で開かれました。特定の映画について国会議員のみを対象にした試写会は異例です。
アルゴピクチャーズの説明によると、二月十二日に文化庁から「ある国会議員が見たいといっている」と話がありました。後日、自民党の稲田朋美衆院議員と同氏が会長を務める「伝統と創造の会」や「平和靖国議連」(会長・今津寛衆院議員)からの「要請」であるとの説明があったといいます。
稲田氏は、「靖国」派の政治行動部隊である日本会議国会議員懇談会の事務局次長。「伝統と創造の会」は、稲田氏をはじめ若手「靖国」派議員でつくる議員連盟です。「平和靖国議連」は首相の靖国神社参拝を主張し、安倍晋三前首相を支持する自民党の若手議員を中心につくられました。
配給会社は反発
文化庁の申し入れに対しアルゴ側は「四月公開を前にマスコミ試写の最中であり、フィルムの貸し出しは難しくマスコミ試写に参加してもらいたい。特定の議員だけに見せるというのはおかしいのではないか」と答えました。
ところが文化庁は「三月十二日に(会場となった)東京国立近代美術館フィルムセンターが空いている、映写技師もこちらで用意するから」と試写を迫ったといいます。アルゴの担当者は「公開前の映画を特定の国会議員らに見せろといわれたことは、一種の圧力と感じた」といいます。
全議員向け試写
その後、文化庁とのやり取りの中で、「いろいろな立場の国会議員に見てもらうということではどうか」とも話し合われ、アルゴ側も「もともとたくさんの人に見てもらうのはいいことだし、国会議員に見てもらう機会も貴重」と判断し、すべての国会議員を対象にした試写会としてアルゴ主催で開くことに同意したといいます。
試写後、稲田氏は記者団に、「侵略戦争の舞台装置としての靖国神社という描き方で政治的メッセージを感じた。ある種のイデオロギーをもった政治的に中立でないものを日本映画にして助成するにふさわしいか」とのべ、政府出資の基金からの助成の取り消しを求める考えを示しました。
十三日には「伝統と創造の会」「靖国平和議連」のメンバーが文化庁を呼び、政府出資の基金からの助成は不当であるとの意見をあげました。文化庁は、「助成は審査をクリアして適正になされたもの」とこたえたといいます。
靖国派は、昨年が南京事件七十周年にあたり、中国、日本のみならず世界で同事件を記念・検証する取り組みがもたれるのに“対抗”して、「南京事件は存在しなかった」など特異な主張を繰りかえしてきました。
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