2008年3月17日(月)「しんぶん赤旗」
過剰融資 元凶は都自身
新銀行東京
過大目標決め実行迫る
新銀行東京に四百億円の追加出資案を都議会に提案した石原慎太郎知事と新銀行東京は、すべての責任を仁司泰正元代表執行役(昨年六月辞任)ら旧経営陣になすりつけています。しかし、経営悪化の原因となったずさんな過剰融資の仕組みをつくり、あおったのは石原都政そのものです。(岡部裕三)
新銀行の津島隆一代表執行役(元東京都新銀行設立本部長)が公表した経営破たんの調査報告書(概要)は、不良債権が増加した融資原因は「旧経営陣の常識を逸脱した業務執行」にあるとしています。二〇〇五年度下期に、二十四億円の融資の焦げ付き(債務不履行)が発生したにもかかわらず、仁司元代表が「(融資)拡大路線を継続した」と非難しています。
開会中の都議会で、石原知事も「当時の経営陣が融資残高拡大路線に固執した」「質より量を優先した業務運営」(二月二十六日、本会議)などと矛先を向けています。
知事も了承し
しかし、銀行の基本計画をつくり、過大な融資目標や、ずさんな融資の審査システムを設定したのは、新銀行に天下りした大塚俊郎元都副知事(現在、取締役会議長)ら都の幹部で、石原知事もそれを了承していたのです。
設立直前に石原都政がつくった新銀行マスタープラン(〇四年二月)は、開業三年目(〇八年三月期決算)で、融資・保証残高を九千三百億円と中堅地銀なみにする過大な目標をたてていました。
新銀行が開業直後の〇五年八月につくった中期経営目標は、下方修正したものの七千三百七十億円と過大な目標に固執。新銀行の最大株主の都もこれを了承していたのです。
東京都は、取締役会や株主総会でも新銀行の尻をたたき、過大な融資目標を達成するよう求めてきたのです。(表参照)
通らない弁明
〇五年十二月には取締役会に「目標の達成のためには、なお一段の努力を要する」と申し入れ、〇六年六月の株主総会では融資の実績に「満足しているわけではない」と、新銀行に圧力をかけました。融資の焦げ付きが急増し、累積損失が四百五十六億円(〇六年九月)に膨らんだにもかかわらず、〇六年十二月の取締役会でも「年間目標達成のためには、なお一段の努力が必要」とはっぱをかけました。
その結果、新銀行の昨年末の融資・保証残高は二千五百五十億円に増え、焦げ付いた融資が二百八十五億円(今年一月末)にのぼりました。
どう弁明しようと、東京都が新銀行に過大融資目標を押しつけてきたことは明白です。石原知事は、経営破たんの責任を潔く認め、新銀行への追加出資案を撤回すべきです。
新銀行取締役会に対する東京都の申し入れ内容
2005年12月16日
「(05年9月中間決算で)融資・保証残高は約569億円にとどまり、(05年度の)目標である2,580億円の達成のためには、なお一段の努力を要する」
2006年12月1日
「(06年9月中間決算で)融資・保証残高は2,819億円で、今期の純増額は889億円にとどまっており、年間目標額4,300億円の達成のためには、なお一段の努力が必要」