2008年3月15日(土)「しんぶん赤旗」

主張

後期高齢者医療

75歳で差別する非情許せない


 後期高齢者医療制度の実施が近づくにつれて、怒りの声も広がっています。七十五歳という特定の年齢に達したら別枠の医療保険に囲い込み、負担増・給付減を強いるような制度は世界にも例がありません。

 「高齢者だけを切り離して肩身の狭い思いをさせるような社会、医療を受けることをためらわせるような社会、日本をこんな社会にしてしまっていいのか」。十四日の参院予算委員会で、日本共産党の小池晃議員が政府を追及しました。

喜寿も喜べない

 この制度の実施で起きることはきわめて理不尽です。例えば七十五歳の夫と六十八歳の妻が子の健康保険の扶養家族になっているケースでは、おじいさんだけが健保の資格を奪われて後期高齢者医療制度に追いやられます。七十歳の妻と七十七歳の夫の二人ぐらしで、夫が元気に働き健保に加入、妻はその扶養家族の場合は夫婦ともに健保の資格を失い、夫は後期高齢者医療へ、妻は国民健康保険へ加入させられます。これでは喜寿も喜べません。

 これまでの医療保険は年齢に関係なく加入できたのに、新たな制度では七十五歳で全員脱退させられることになります。小池氏が指摘したように「家族一緒にくらしていた『母屋』から七十五を過ぎた人だけ『離れ』に移すようなやり方」です。

 七十五歳以上の高齢者らを対象にした現行の老人保健制度は、現役と同じ保険に加入したままで財政を調整する仕組みです。独立した別枠の制度に押し込める後期高齢者医療制度とはまったく違います。

 こんな制度をつくる理由について舛添要一厚労相は、七十五歳以上の高齢者には「若者や壮年とは違う心身の特性」があり、「医療費を維持可能な制度にする必要」があるからだと答弁しました。

 「特性」は別枠の差別制度にする理由にはなりません。特性を言うなら子どもには子どもの、女性には女性の、男性には男性の特性があります。いまの制度で特性に合った医療を保障すればいい話です。

 加えて問題なのは政府の「後期高齢者の特性」のとらえ方です。舛添大臣によると、(1)治療が長期化し、複数疾患がある(2)多くの高齢者が認知症(3)いずれ避けることのできない死を迎える、というものです。

 小池氏がのべたように地域で、仕事や趣味で元気に活躍する高齢者は少なくないし、人生の達人から学ぶこともたくさんあります。手間もお金もかかる、いずれ死が避けられないなどと、ひとまとめに決め付けるのは許せません。

 病気がちでいずれ死を迎える、と七十五歳以上の高齢者を切り離す政府のやり方は血も涙もありません。「後期」という政府の呼び方には侮辱的な響きがしみついています。

ただちに撤回を

 政府の医療費削減の見通しによると、二〇一五年には三兆円、二五年には八兆円で、そのうち後期高齢者分は、それぞれ二兆円、五兆円に達します。この数字を見れば、七十五歳以上の高齢者を狙い撃ちにしていることは明白です。

 福田康夫首相は「制度はだれにとってもいいものであってほしいが、限界がある」と問題があることを認めました。大きな矛盾があるからこそ、政府も部分的ではあれ凍結措置を取らざるを得ません。

 しかし、凍結ではやがて解凍されることになります。「金がかかる」と高齢者の命をおろそかにする後期高齢者医療制度は、ただちに中止、撤回するよう求めます。


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