2008年3月14日(金)「しんぶん赤旗」

賃貸保証会社が業務停止

3万戸入居者 保証人失う

家賃二重払い被害も


 賃貸契約で入居者の連帯保証人を請け負っていた賃貸保証会社「ウィル賃貸保証」(大阪市、資本金五千万円)が二月に突然、業務を停止して連絡が取れなくなり、約三万戸の賃借人が連帯保証人を失う事態が起きています。事情を知らずに業務停止後、家賃をウィル賃貸保証に振り込んだ入居者が、家主からあらためて支払いを求められる「二重払い」のケースも。不動産仲介会社が入居者を他の保証会社に引き継ぐ作業に追われるなど、影響が広がっています。(本田祐典)


 「大変な被害を受けている。負担は入居者に求めるしかない。申し訳ないことになった」

 大阪市内の不動産仲介会社で働く男性は話します。この会社では顧客のうち約二百戸が、ウィル賃貸保証を連帯保証人にして賃貸借契約を結んでいます。

 男性によると、ウィル賃貸保証の業務が停止したことで、▽滞納していた家賃を事情を知らずにウィル賃貸保証に振り込んでしまい、家主にあらためて支払いを求められている(入居者)▽滞納家賃をウィル賃貸保証が立て替えてくれる契約だが、振り込まれていない(家主)―といった、トラブルが起きています。

 この男性は、ウィル賃貸保証に家賃を振り込んだ入居者には、さらに家主に払うように督促を行っています。また新たに連帯保証を請け負う保証会社の料金も入居者の負担になるといいます。

安く簡便が売り

 ウィル賃貸保証は、二〇〇五年に設立し、居住用の物件に限って連帯保証を請け負ってきました。入居者側に対しては「審査時間三分」など手続きの簡便さや業界一という保証料の安さを、家主側には滞納入居者に代わって賃貸契約を解除するなどのメリットを強調。大阪、神戸両市など近畿地方を中心に契約件数を伸ばし、累積保証件数は約三万件に達していました。

 男性がウィル賃貸保証の業務停止を知ったのは二月の初めごろ。オフィスは閉まったままになり、電話をかけても呼び出し音が鳴るだけで応答がない状態が続いています。

強制加入が条件

 被害を受けた入居者のなかには、連帯保証人を立てることが可能なのにウィル賃貸保証との契約を不動産屋に求められた人がいます。

 前述の不動産仲介会社で働く男性は、契約を求めた理由を「賃貸保証会社と契約しなければ入居させない物件が増えているからだ」と説明します。

 滞納家賃の徴収を確実にしたいという家主や管理会社の要望で、男性の働く会社では仲介する物件の約三割が保証会社に強制加入です。仲介業者側にとってもトラブルに対処する負担が軽減するため「保証会社は便利」というのが本音です。

 「とくにウィルは、保証料が安いので入居者に納得してもらいやすかった。審査も、通らない人はいないぐらい簡単だった」

 賃貸保証会社の業界団体、賃貸保証制度協議会はウィル賃貸保証を二月十二日付で除名しました。井坂泰志会長は「赤字経営のところもある。そういう企業が今後も業務を続けられるとは思わない」として、今後も保証会社の倒産はありうるとしています。

図


 賃貸保証会社 賃貸契約の入居希望者から保証料を取って連帯保証人を請け負う民間企業。日本では十数年前に誕生し、市場を拡大しています。入居者との契約との一方で家主側とも契約を結び、滞納家賃の督促や立ち退き手続きを代行。規制や監督官庁がないため、深夜訪問や玄関への張り紙など強引な家賃取り立てをする業者も野放しになっています。


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