2008年3月14日(金)「しんぶん赤旗」
続消費税なぜなぜ問答
社会保障の財源を考える(29)
Q 自営業者の負担 どう変わる?
「全額消費税方式」にすると、自営業者など国民年金加入者の場合、負担はどう変わるのでしょうか。
国民年金の掛け金は定額制になっています。二〇〇八年度は月額一万四千四百十円ですから、年間で十七万円以上になります。夫婦二人分なら三十五万円近い額です。定額制のため、低所得者にとって負担が重く、「消費税に置き換えた方が、負担が軽くなる」という議論があります。
たしかに、国民年金加入者が消費者として負担する消費税だけを考えた場合には、低所得者の負担は軽くなります。表は、「夫婦で飲食店経営」「単身で製造業経営」の二つの場合について試算したものです。消費者としての消費税負担の変化だけを考えた場合には、表の「A」欄のように、単身で二千万円の売り上げがある場合を除けば、みな負担減になっています。これだと「消費税方式」に変えた方がいいという議論が出てきます。
問題は、自営業者の場合、消費者として消費税を負担しているだけでなく、自らが「消費税課税事業者」として消費税を税務署に納税する義務を負っていることです。以前は三千万円だった免税点が一千万円に引き下げられたため、表の自営業者は、いずれも消費税納税業者です。簡易課税方式で計算すると、消費税率が5%上がることにより、年間数十万円規模で納税額が増えることになります。
もちろん、消費税をすべて販売価格に転嫁できれば問題はないのですが、「お客が逃げるのが心配で値上げできない」(飲食店)、「納入先の大企業から、消費税分の単価切り下げを求められた」(製造業)などの理由で、消費税を転嫁しきれない場合が生じる可能性があります。かりに、増税分の半分しか転嫁できず、残りの半分について「身銭を切る」羽目に陥ったとした場合の負担変化は「B」欄のようになります。今度は、夫婦世帯で最も売り上げが少ない場合以外は、すべて負担増になっています。
国民年金加入者でも、フリーターなどの場合は負担が軽くなる場合が多いと思われますが、フリーターなどの非正規雇用者は、本来ならば厚生年金に加入すべき人たちであり、その方が負担が軽くなり、将来の年金額も増えます。
これまでは保険料を払っていなかった専業主婦などの「三号被保険者」や、保険料を免除されている生活保護世帯の場合には、消費税増税で一方的に負担増になります。
最後に、高齢者の場合は、すでに年金を受給している人の場合も、無年金の人の場合も、消費税増税で負担増になります。
以上のように、「全額消費税方式」の導入は、ほとんどの国民にとって負担増になると考えられます。国民の負担は増える、無年金者は救済されない、得をするのは企業だけ―こんな「基礎年金=消費税財源方式」を絶対に許すわけにはいきません。(つづく)
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