2008年3月14日(金)「しんぶん赤旗」
どうする農村戸籍
中国・全人代で論議
中国・北京で開催中の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で農村戸籍の改革について話し合われています。かつて農民を農村に縛りつけておく制度だった農村戸籍は一九八〇年代以降、改革が進んでいますが、全面廃止には政府内に抵抗があります。
五〇年代に作られた戸籍制度は農村と都市の二本立てで、農民が都市に移住することを厳しく制限しました。農村の余剰労働力が都市に流れ込むことを規制するためでしたが、農民にとっては貧しさから抜け出すことを困難にする酷な制度です。社会保障も戸籍によって異なり、農村住民は都市住民より低い保障しか受けられません。
いまは出稼ぎの増加で移住制限は形がい化が進んでいます。しかし、都市に移住しても戸籍を移すことが困難なため、就職や社会保障、子どもの教育で差別的扱いを受けることになります。
国は都市への移転条件を緩和しています。地方政府では独自に農村・都市戸籍を統一する動きが広がっています。問題は農村戸籍を全国的に廃止するかどうかです。
全人代の代表(議員)からは「不平等な制度」だとして改革を求める声があがっています。新京報紙によると、都市・農村戸籍の区別と社会保障制度を切り離す提案も出ました。
浙江省杭州市の代表は、二百万人の市外からの移住者の子どもに市民と同じ義務教育を保障。同省嘉興市の代表は、市の居住証明を得れば住宅を保障するなど、地方独自の施策も紹介されました。
担当官庁、公安省の白景富次官は戸籍制度改革の必要性を認めつつも、大都市の人口は今後も増加が予想されるため、「一律にはいかない」と困難さを強調しました。
田成平・労働社会保障相は九日の記者会見で「関係部門が戸籍改革について研究中だ。徐々に案が出てくるだろう」と述べ、全国的改革には時間がかかるとの認識を示しました。(北京=山田俊英)