2008年3月14日(金)「しんぶん赤旗」
主張
「新銀行東京」
黒字見通し偽装の疑惑は重い
東京都の石原慎太郎知事が推進した「新銀行東京」が開業からわずか三年で行き詰まり、都が新たに四百億円を投入しようとしている問題で、専門家の試算では三年後でも赤字の見通しだったのに、都が設立の際に示したマスタープランでは「黒字」に書き換えられていた疑惑が新たに浮上しました。
事実とすれば、都が経営の見通しがないのを承知で「新銀行東京」の設立を強行したことになります。都民の税金をムダ遣いした石原都政の責任は、いよいよ重大です。
3年後黒字が開業条件
「新銀行東京」は「石原銀行」ともいわれるほど、石原知事と東京都政が中心になって設立した銀行です。もともとは石原氏が二〇〇三年の知事選のさい「目玉公約」にした構想で、都が一千億円を出資して〇五年四月に開業しました。
今回都議会で関係者の証言をもとに日本共産党議員が追及し、一部のマスメディアの調査でも明らかになった疑惑は、マスタープランの原案を作成した専門家の試算では三年後でも赤字だったのに、都の幹部が黒字になるよう書き改めたというものです。実際、マスタープランでは開業三年後の〇八年度三月期は「五十四億円の黒字」を見込んでいます。
銀行法では銀行を開業するにあたっては収支の見通しが良好で、三年後には利益が見込めることを免許の条件としています(銀行法第四条など)。厳密にいえば「新銀行東京」は既存行の買収であり、新たに免許を取得したわけではありませんが、「新銀行」と銘打った以上、三年後黒字の見通しを偽った責任は軽く扱ってすませられるものではありません。偽装の疑惑は重いものがあります。
とりわけ重大なのは、黒字の見通しを偽装してまで「新銀行東京」の設立を強行した石原都政の責任です。
「新銀行東京」は三年後の黒字どころか、今年三月末の累積赤字は一千億円を突破する見通しです。東京都が出資した一千億円のほとんどが失われつつある段階です。石原知事と都が送り込んだ現在の経営陣はもっぱらこれまでの経営陣に経営破たんの責任を押し付けていますが、都が黒字の見通しまで偽装して設立を強行したとなれば、いよいよ石原都政の責任は免れないものになります。
都議会でこの問題を追及した日本共産党の吉田信夫議員は、第一に選挙公約にもとづき「オール与党」の賛成で設立した責任、第二に黒字の偽装など設計・マスタープランをつくった責任、第三に人事、任命、第四に乱脈経営を監視する体制を確立できなかった責任、第五に幾度も引き返すチャンスがあったのにそれを怠った責任―と、段階を追って都政の責任を浮き彫りにしました。
都が「新銀行東京」に出資した一千億円は都民の税金です。石原都政が都民のくらしを少しでも考えるなら、旧経営陣にだけ責任を転嫁するのではなく、破たんの責任を認め追加投資など直ちにやめるべきです。
都はまず徹底した調査を
都議会での日本共産党の吉田議員や大山とも子議員の追及にたいし、石原知事も都の幹部も、根拠を示さず疑惑を頭から否定しました。石原知事が「証言者の名前を明かせ」などというのは「卑怯(ひきょう)千万」(大山議員)であり、重大な疑惑が突きつけられているのに事実も調べないという態度は言語道断です。
黒字偽装の疑惑を東京都は徹底して調査すべきであり、ことは銀行行政をつかさどる金融庁にも、無関心ではすまされないはずの問題です。