2008年3月13日(木)「しんぶん赤旗」
続消費税なぜなぜ問答
社会保障の財源を考える(28)
Q サラリーマンと 企業の負担は?
基礎年金を全額税方式にすると、現在、保険料財源から基礎年金に充てている分は必要なくなります。その分だけ保険料が安くなる計算になります。これによって、国民の負担はどうなるのでしょうか。まず、厚生年金や共済年金に加入しているサラリーマンの場合を考えてみましょう。
厚生年金の財政データによると、毎年の厚生年金の保険料収入は労使あわせて約二十兆円で、そのうち約七・五兆円が基礎年金財源のための拠出金に充てられています。基礎年金が全額税方式になれば、この拠出金はなくなるため、その分、保険料を下げることができます。年収が分かれば保険料も計算できますから、どのくらい下げられるかも年収から計算できます。
一方、消費税が現行5%から10%に引き上げられれば、消費税の負担は今の二倍になります。どれだけ消費税を負担しているかは消費額によって決まりますが、年収だけでなく世帯人数によっても消費額は違ってきますから、保険料ほど計算が簡単ではありません。しかし、家計調査などの統計データを使えば、平均的な消費税負担額の計算は可能です。
もう一つ考慮する必要があるのは、所得税や住民税の社会保険料控除です。厚生年金の保険料が減ると、社会保険料控除も減ることになるので、所得税や住民税は逆に増えてしまいます。この効果も、合わせて考えなければなりません。
表は、以上の三つの要素を入れて、「全額税方式」を導入した場合のサラリーマンの負担を計算したものです。上の表は単身サラリーマン、下の表は片働き四人世帯の場合です。どちらの場合も、差し引きで負担が重くなるのが分かります。
一方、厚生年金の保険料が下がるということは、事業主の負担分も減るということになります。事業主全体では四兆円近い負担減になる計算です。たとえば、トヨタ自動車の場合、従業員数は臨時職員を除いて六万七千六百五十人、平均年収が八百万円なので、約百四十億円も保険料の会社負担分が減ることになります。一方、サラリーマンと違って企業には消費税の負担はありませんから、こちらの負担増はありません。
日本経団連の御手洗冨士夫会長も「全額税方式」を提唱している一人ですが、導入で生じる事業主の負担軽減分について、「社員に還元すべきもの。普通の経営者なら会社に繰り入れることはしない」(昨年十月九日の記者会見)と発言しています。しかし、保険料が減った分を企業が賃上げなどで労働者に還元するという保証はありません。いまでも大企業はバブル期を大きく上回る利益をあげているのに、非正規雇用を増やすなど、いっそうの賃金コストの切り下げをはかっています。「サラリーマンは差し引き負担増、企業は丸もうけ」―ここに、基礎年金の「全額消費税方式」に財界が賛成する理由があるのです。(つづく)
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