2008年3月12日(水)「しんぶん赤旗」

続消費税なぜなぜ問答

社会保障の財源を考える(27)

Q 無年金者は「税方式」で救われる?


 基礎年金を全額税方式にすることの最大の「利点」として、「保険料未納者がなくなる」ということが強調されています。しかし、本当に無年金者がなくなるのでしょうか。

 民主党の案では、現在は国民年金に加入している人も含めて報酬比例年金を創設し、収入に比例した保険料を集めることになるので、保険料がなくなるわけではありませんが、基礎年金分に限定すれば保険料はなくなります。「日経」の案では、基礎年金分の保険料はなくなり、いま国民年金に加入している人は、保険料を払う必要がなくなります。したがって、「未納者がなくなる」のは確かです。

 しかし、これまでに未納だった人が、過去の分までさかのぼって未納でなくなるというわけではありません。民主党案も「日経」案も、保険料なしでもらえる基礎年金は、全額税方式になってから以降の消費税を払った年数の分だけだということになっています。具体的には、たとえば二〇〇八年度から全額税方式になったと仮定すれば、将来、新しい基礎年金を満額もらえるのは、その時点で二十歳未満の人だけです。二十歳以上の人は、新基礎年金と旧基礎年金をあわせて受給することになります。六十歳以上の人は、旧基礎年金だけを受給します(図の(1))。

 これまで一回も保険料を払ったことがない人の場合には、新制度発足後六十歳になるまでの間で、年金目的消費税を払った期間に応じた分だけしか基礎年金をもらえません。満額の基礎年金をもらえるのは、現在二十歳未満の人だけです。二十歳以上の人は、年金目的消費税を払う期間が短いので、もらえる年金額が少なくなります。

 しかも、いまの年金制度では、加入期間が二十五年以上ないと基礎年金がもらえません。これまでずっと保険料が未納で加入期間がゼロの場合は、六十歳になるまでに今後二十五年以上、消費税を払う必要があります。ということは、いま三十五歳を超えていると、もう間に合わないことになります。「日経」案では「二十五年を十年に短縮する」ことも提案されていますが、それでも五十歳超の未納者は救済されません(図の(2))。

 重大なことは、消費税財源による全額税方式の場合には、このような救済されない無年金者も、「年金財源のため」に増税された消費税を払わされることになるということです。

 「日経」案の計算では、消費税は5%増税されます。無年金で生活が苦しく、年間の消費が二百万円程度だとしても、5%で十万円程度の消費税の負担が増えます。いま五十歳で、かりに八十五歳まで生きたとすれば、三十五年間で三百五十万円もの消費税の負担が増える計算です。年金は一円ももらえないままなのに、こんな消費税増税の負担だけがのしかかるのです。これでは、無年金者の救済などということはできません。(つづく)

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