2008年3月12日(水)「しんぶん赤旗」

主張

コロンビア越境問題

平和めざす地域共同の力示す


 南米コロンビアが隣国エクアドル領内に越境攻撃を行って一週間、高まった緊張は、政治解決を求める域内の取り組みで終息しました。

 この経過は、米国から長年の干渉を受けてきた経験にたってつくられた、域内の紛争を自主的・平和的に解決する枠組みの有効性を裏付けるとともに、平和をめざす域内諸国の共同を一段と強めるものです。

迅速な和平努力

 今回の事態はコロンビアが一日、エクアドル領内に潜んでいた反政府武装勢力コロンビア革命軍(FARC)の一団を空爆し、現場から遺体を回収したことによるものです。

 エクアドルはこれを主権侵害だと強く抗議し、コロンビアと断交するとともに国境地域に軍を展開しました。エクアドルを支持するベネズエラもコロンビアと事実上断交するとともに、コロンビアとの国境地帯の警備のため軍を動員しました。ニカラグアもコロンビアと断交するなど、情勢が緊迫しました。

 一方で、紛争の解決をめざす動きも迅速に進められました。エクアドルの要請で開かれた米州機構(OAS)常設理事会は五日、コロンビアの行動をエクアドルの主権を侵害し、国際法違反だとする決議を全会一致で採択しました。これにはコロンビアも参加し、事実上謝罪しました。

 七日には中南米二十一カ国で構成するリオ・グループの首脳会議がドミニカ共和国で開かれ、宣言を採択しました。同国大統領の提案でコロンビア、エクアドル、ベネズエラ、ニカラグアの各大統領が握手し、危機を脱したことを確認しました。

 宣言は、コロンビアによるエクアドルの領土と主権の侵害を確認するとともに、コロンビア側の謝罪と再発防止の約束を明記しています。同時に、他国による干渉の拒否、国連憲章を基礎とした域内諸国の平和共存、武装勢力による脅威の克服、OASとリオ・グループによる引き続く支援など、事態の平和解決をめざす枠組みを確認しています。

 これを受け、ベネズエラとニカラグアはコロンビアとの国交を回復しました。ベネズエラは国境地帯に展開した軍の撤収も決めました。

 リオ・グループは、一九八〇年代に米国の干渉を排して中米の内戦終結を支援した中南米の努力の流れをくむものです。同グループが今回の事態収拾に積極的役割を果たしたことは、紛争を平和的に解決する域内諸国の共同の重要性を示しています。

 米国がコロンビアに軍事顧問団を派遣しているもとで起きた越境攻撃は、孤立した事件ではありません。エクアドルのコレア大統領は、コロンビアとの紛争を根本的に解決するには時間がかかるとしています。

 それだけに、域内の自主的な平和の道筋が確認されたことは今後にも大きな意味をもっています。

米国の孤立鮮明

 ブッシュ米大統領は四日、コロンビアへの「全面支持」を表明しました。同時に、ベネズエラのチャベス政権を非難するなど、米国の干渉を拒否して自主的な国づくりを進める中南米の国ぐにへの敵意をあらわにし、緊張に油を注ぎました。

 しかし、米国の主張に同調する声はなく、かつて米国がその影響力行使に利用したOASでも、コロンビア非難の抑え込みに失敗しました。アンデス共同体で構成するアンデス議会は「米国が干渉するときではない」とクギを刺しました。

 今回の経過が中南米での米国の孤立を鮮明にしたことも注目されます。


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