2008年3月9日(日)「しんぶん赤旗」

05年度 国内のCO2

150事業所で半分排出

03年度は180 集中が進む


 地球温暖化をもたらす二酸化炭素(CO2)の国内総排出量(二〇〇五年度)の約半分が、石炭火力発電所などの電力業界や鉄鋼業界など百五十事業所から出ていることが八日までにわかりました。百八十事業所が国内全体の約半分を占めていた二〇〇三年度よりも、CO2排出が大規模事業所にいっそう集中しています。


NGOが推計

 省エネルギー法にもとづいて経済産業省に報告された国内の発電所や工場などの事業所のCO2排出量について、環境NGOの気候ネットワーク(浅岡美恵代表)がおこなった最新の分析と推計でわかったもの。

 同ネットワークが同省に情報開示を請求していた二〇〇五年度分の開示データのうち、もっともCO2排出量が多かったのは、愛知県碧南市の中部電力碧南火力発電所(出力四百十万キロワットの世界最大級の石炭火力発電所)で、二千四百八十四万トン。このほか電力、石油化学、セメントなど上位百十事業所だけで、国内総排出量(十二億九千三百万トン)の四分の一以上、28%を占めていました。

 同省が情報開示を拒否した大規模事業所についても、ほかの統計資料も含めて推計すると、製鉄所や発電所を中心とする全国百五十事業所が、国内全体のCO2排出量の51%を占めることがわかりました。

 対象とした七千四百四十一の大規模事業所のうち、大量排出源の東京電力などや鉄鋼高炉などの事業所を含む六百十二事業所(8・2%)の排出実態の情報が開示されませんでした。同ネットワークは、CO2排出実態の全容解明のために徹底した情報開示を経産省に求めています。


解説

「業界任せ」問われる政府

 わずか百五十の大規模事業所が国内全体の二酸化炭素(CO2)排出量の半分を占める実態は、大量排出事業所への削減対策が避けて通れない課題であることを示しています。先進国のCO2削減目標を定めた京都議定書の約束期間が今年から始まり、政府は、新たな実効性ある国内削減対策導入を迫られています。

 CO2排出削減に早くからとりくんだ欧州連合(EU)は、太陽光や風力など自然エネルギー利用の比重を高めるため、固定価格による自然エネルギー電力の買い取りを電力会社に義務付けたり、企業にCO2排出枠を設定して削減を進める「国内排出量取引」制度を導入したり、大量発生源への対策を急ぎました。

 ところが、日本では大量排出源の電力、鉄鋼など産業部門の削減対策が、日本経団連の「自主行動計画」まかせにされたうえ、CO2を大量に排出する大規模石炭火力発電所が急増。日本は世界一の石炭輸入国になりました。

 政府がまとめた京都議定書目標達成計画改定案は、一九九〇年比6%減のうち国内削減分がわずか0・6%分にすぎません。残りの5・4%は、他国との排出量をやりとりする「京都メカニズム」に依存する内容で、その達成が危ぶまれています。削減目標達成のためには、「自主行動」まかせにしないで、政府は大量排出源となっている大規模事業所の排出規制を一刻も早く強めるべきです。(宇野龍彦)



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