2008年3月7日(金)「しんぶん赤旗」

主張

後期高齢者医療

異常な差別制度は撤回を


 福田内閣が四月から後期高齢者医療制度の実施を強行しようとしていることに、怒りと抗議の声が広がっています。

 中止・撤回、見直しを求める地方自治体の決議は五百を超えて全自治体の三割に迫り、反対署名は三百五十万人に上っています。

 廃止法案を衆院に提出した日本共産党など野党四党は五日、共同で緊急集会を開きました。参加した団体の代表らから、「高齢者を差別する制度は断じて認められない」など厳しい抗議の発言が相次ぎました。

世界に類ない医療制度

 後期高齢者医療制度は二〇〇六年六月に、「医療構造改革」の名で小泉内閣と自民、公明が強行しました。七十五歳以上の人を機械的に「後期」高齢者として現在の医療保険から追い出し、負担増と治療制限を強いる仕組みに囲い込むという世界に類のない差別医療制度です。

 七十五歳以上の人口比率が高まった場合も、後期高齢者の医療給付が増えた場合も、保険料の負担が増える過酷な制度です。

 年金が月一万五千円以上の人から保険料を天引きする強制徴収は、高齢者のくらしを直接脅かします。

 まして事のついでに六十五歳以上の高齢者の国民健康保険料も、年金から天引きすることには何の道理もありません。すでに六十五歳以上の高齢者は年金から介護保険料を天引きされています。たとえば大阪市の場合、月一万五千円の年金しかない人でも、天引きは介護と医療の保険料を合わせて四千四百円あまりで、年金の三割に相当します。明らかに生存権の侵害です。

 「天引きなら未納が発生しない」という徴収側の一方的発想であり、年金を担保に取る悪質な金融業者のようなやり方はやめるべきです。

 後期高齢者医療制度に自動的に移される六十五歳以上の重度障害者にも不安が広がっています。本人が申請すれば現行制度にとどまることができますが、その場合、自治体によっては障害者の医療費助成制度の対象からはずされてしまいます。自治体にいままでどおりの助成を続けさせる必要があると同時に、問題だらけの後期高齢者医療制度そのものを中止に追い込むことが重要です。

 福田康夫首相は「世代間の公平を図り、持続可能な制度とする必要がある」として、後期高齢者医療制度は「適切だ」と答弁しています。しかし若い世代にとっても、日本の医療保険が「生涯保険」でなくなり、七十五歳で断ち切られて差別的な医療制度に強制加入させられるという新たな将来不安をもたらします。

「痛み感じてもらう」と

 あえて差別制度を導入するのはなぜか。石川県で自治体職員らを前に厚労省の担当者は、「医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者が自分の感覚で感じ取っていただくことにした」と説明しています。

 厚労省の社会保障審議会では病院でのみとりには金がかかると議論し、特別部会報告では「後期高齢者の心身の特性」として「いずれ避けることができない死を迎える」とまとめています。厚労省の課長は講演で「家で死ねっていうこと。病院に連れてくるな」と発言しました。

 「いずれ死ぬ」のだからと別枠の制度に囲い込んで医療を抑制するとともに、療養病床の大幅削減と軌を一にして終末期の高齢者を病院から追い出し、医療費を削減する。あまりにも卑劣な高齢者いじめです。

 こんな制度は撤回させ、廃止するしかありません。


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