2008年3月5日(水)「しんぶん赤旗」
続消費税なぜなぜ問答
社会保障の財源を考える(23)
Q 国際競争力が高まるって本当?
「道路の中期計画(素案)」は、道路整備の意義について、日本の国際競争力の強化に役立つということを強調しています。しかし、素案に盛り込まれた計画が、本当に国際競争力を高めるような内容なのでしょうか。
素案で、国際競争力強化のための課題としてあげられているものの一つに、拠点空港・拠点港湾から高速道路へのアクセス(接続)率という指標があります。国土交通省は、「年間貨物取扱量一千万トン」などの基準で選定した二十二空港、四十九港湾、あわせて七十一カ所のうち、近くの高速道路のインターチェンジ(IC)まで十分以内で到達できる空港・港湾の割合を、「アクセス率」と定義しています。同省によれば、欧米ではアクセス率が九割に達しているのに、日本は七割しかなく、四空港・十八港湾が未達成だというのです。素案では、今後十年間に十五カ所で「十分以内」を実現し、欧米なみの九割に達することを目標としています。
国交省の国会答弁によれば、未達成の港湾の状況は表のようになっています。この中には、十二分―十五分でアクセスできる港湾が六カ所もあります。今でも十二分で行けるところを十分に短縮したとして、どれだけ国際競争力強化につながるのかは疑問です。
また、そもそも「拠点港湾」が全国に四十九カ所もあるというのが過大だという点も指摘しないわけにはいきません。国交省は、比較対象とした欧米の港湾のデータを公表していませんが、欧州連合(EU)の統計局のデータで調べると、「年間貨物取扱量一千万トン」を満たす港湾は、ヨーロッパ全体で九十港湾しかありません。ドイツやフランスはそれぞれ六港湾しかありません。ハンブルクやマルセイユなど、大都市にある古くからの有名な港が多く、すぐ近くまで高速道路が整備されています。比較的多いイギリスやイタリアでも、「拠点港湾」に該当するのは十数港湾です。ドイツやフランスはアクセス率が100%と思われますが、もともと分母が少ないのですから当然といえます。
国交省が「拠点港湾」としている日本の港湾の中には、近隣の港湾と競合して、貨物量が伸び悩んでいるところが少なくありません。巨額の投資をして国際コンテナバースを整備したのに、外国からの船がほとんど来ないなどの浪費が、あちこちで発生しています。表で挙がっている十八港湾の中でも、小名浜港や鹿児島港では、巨額の費用をかけた人工島建設に対して、住民の批判が強まっています。港湾整備に無駄な投資をしたうえに、今度はアクセス道路にも税金をつぎこむ。まさに「無駄が無駄を呼ぶ」構造になっているのです。(つづく)
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