2008年3月5日(水)「しんぶん赤旗」
共産党 暮らしも財政も両立
橋下府政“府民も覚悟を”
大阪府議会で論戦開始
一月の大阪府知事選で「子どもが笑う大阪」「府政を変える」をかかげ、百八十三万票を得た自民党府連推薦の橋下徹知事。「財政非常事態」を宣言し、財政再建のために「府民も覚悟を」と迫っています。府議会が開会し、論戦が始まります。府民が橋下知事に託したものは何か、それにどうこたえるのか。橋下知事と各党の姿勢が問われます。(小浜明代)
「閉塞感打破託す」(「毎日」)、「支援策前面 本音に共感 子育て世代動いた」(「読売」)。知事選翌日、各紙はこう府民の動向を報じました。
“暮らしも財政もたて直しを”というのが府民が橋下知事に託した願いです。
しかし橋下氏は当選後、子育て支援や府民の暮らしについて口にしなくなり、財政再建だけが前面にでてきています。
これに対し日本共産党府議団の阿部誠行幹事長は、「暮らしも財政再建もという府民の願いは両立できます」と強調します。
その柱の一つは、財政危機の要因であるゼネコン・大企業優遇のムダな大型開発と、部落解放同盟の利権の温床となり差別解消を妨げている同和事業という大きなムダにメスをいれることです。
同和事業関連では、部落解放同盟が事実上運営する人権協会に床面積約六千三百平方メートルの建物をただで貸し、関連団体に毎年四億四千万円の補助金や委託金を支出しています。
しかし橋下知事には財政危機の原因の解明や、大型開発、同和事業を見直すという発言はありません。府営施設の見直しをいいながら人権センターは視察せず、人権協会もいまのところ対象になっていません。
それどころか知事が議会に提案している七月までの暫定予算案では、道路整備などの事業に百八十三億円の府債を認め、今後も開発を継続し、同和事業も一部継続しています。
柱の二つ目は、国による大企業優遇税制の是正と地方税財源の確保を求めながら、府として大もうけしている大企業に応分の負担を求め、法人事業税の超過課税率を〇・〇五ポイント引き上げて一・一倍にすることです。これだけで百億円の増収になります。
この点でも橋下知事は、大企業や国の制度に対しての言及はありません。
■生活も深刻
橋下知事以前の「オール与党」府政のもとで国の構造改革による貧困と格差がもっとも深刻な大阪で、府民のくらしは非常事態です。
二歳児までという全国最低クラスの子ども医療費助成制度の拡充や輸入食品などの安全確保、救急医療体制の確立、後期高齢者医療制度での保険料引き下げや減免への府独自の財政支援、企業への非正規雇用の正規化への支援などは府民の切実な願いであり、急務です。
しかし、橋下知事は暫定予算案で、国の予算で府に新年度から配置予定の九百人の教員増を見送りました。市町村への補助金・負担金事業では認可外保育施設の認可化促進、学童保育の施設改修、密集市街地整備など、府民の暮らしや福祉、安全にかかわるものも含め、全体の約七割におよぶ百二十七事業が計上されていません。
■首長ら批判
市長会で知事から理解を求められたあとでも、「おわびするといわれても納得できる話ではない」(枚方市の竹内脩市長)など、各市長から厳しい声があがりました。通年予算を組む市町村は先行きが見通せないまま予算化しています。枚方市からは自民系、民主系、公明、共産の六会派の代表者と議長、副議長の連名で、「年度を通じた市政の計画的運営が困難」として、通年での施策の方針を三月末までに明らかにし、予算化するよう知事あての要請書が出されています。
これだけではありません。財政再建には今後九年間で六千五百億円の歳出削減が必要だとし、私学助成や府単独医療費助成、公の施設運営費などの府民施策と人件費を削減することになるとも発言しています。
「歴史上、類を見ない大改革を行いたい」。定例府議会の所信表明で橋下知事はこう声をはりあげました。しかし、府民との矛盾も生まれています。
府営施設の一つ、全国から高い評価をうけている女性総合センターでは女性たちが、「男女共同参画社会推進にとってなくてはならない施設」と存続を求めて運動。遠方から通学する生徒の交通費などを半額補助する就学援助費が暫定予算案で計上されなかった夜間中学校の関係者からは、「学ぶチャンスを得られずにきた生徒から再び学びをとりあげることにしないで」と声があがっています。
阿部幹事長は言います。「府民の暮らしも非常事態です。財政危機の原因を明らかにし、暮らしや子育てを応援しながらの財政再建はできるという対案を示し、徹底して論戦したい」