2008年3月4日(火)「しんぶん赤旗」
主張
温暖化国内対策
および腰では責任果たせない
政府の地球温暖化対策推進本部(本部長・福田康夫首相)が、京都議定書目標達成計画の改定案をまとめました。一般からの意見募集をへて、月内に閣議決定します。
二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出抑制を約束した京都議定書で、日本は二〇〇八年から一二年までの第一約束期間に、温室効果ガスを一九九〇年にくらべ6%削減すると公約しました。現状は削減するどころか〇五年度で7・7%、〇六年度の速報でも6・4%上回っています。目標の達成は地球全体にたいする重大な責任です。
見通しそのものが大甘
政府の計画でまず問題なのは、6%の削減目標のうち、森林による吸収で3・8%を、他国と排出枠をやり取りする「京都メカニズム」の活用で1・6%を、国内対策で0・6%をまかなうという枠組みは変えず、これまで決めた対策の確実な実施と、産業界の取り組み強化や自動車の燃費向上などの追加的な対策をおこなえば、目標は達成できるという見通しに立っていることです。6%削減どころか、これまですでに大幅に排出が増えている実情に照らせば、大甘の見通しです。
計画のもとになったのは、環境省と経済産業省の二つの審議会が発表した報告ですが、これに対しては環境保護団体などから、単なる「数字合わせ」で、二酸化炭素の排出の多い石炭火力の比率を減らすため原発の設備利用率を高く見込んでいるなど問題点が指摘されています。抜本的な政策の強化を免れるため、非現実的な見通しに固執しているとすれば、それこそ問題です。
温室効果ガスの排出を削減するためには、森林の活用や排出枠のやり取りだけでなく、実際に排出源にさかのぼって削減することが不可欠です。日本で排出される代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の85%が産業用と運輸・業務用などであり、代表的な百八十事業所だけで全体の51%を占めるという試算もあります。
ところが政府の計画は、産業部門の削減はもっぱら日本経団連が産業ごとにつくっている「自主」行動計画任せで、企業ごと、事業所ごとの削減目標の義務付けはやろうとしていません。ヨーロッパなどですでに導入されている排出量に応じた環境税の導入や「キャップ・アンド・トレード」といわれる排出権取引制度も、いつまでたっても「検討中」で踏み切ろうとはしません。
だいたい温室効果ガスの排出を大幅に減らすためには、省エネなどの技術開発とともに、太陽光・熱、風力などの自然エネルギーの活用を増やす必要がありますが、日本の電力会社は自然エネルギーで発電した電力の買い入れ価格を低く抑え、量も制限しています。政府の計画はそれさえ変えさせようとはしていません。目標が大甘なうえ、排出抑制に役立つ政策はどれもこれも企業任せでおよび腰では、目標の達成困難は逃れようがないといわれて当然です。
国際的責任自覚して
日本は京都議定書で合意した国際会議の開催地であり、ことし北海道の洞爺湖で開かれる主要国首脳会議では京都議定書の目標達成に加え、京都議定書第一約束期間後の国際的な温暖化対策が話し合われます。
日本の国際的な責任のためにも、京都議定書で約束した6%削減の目標が達成できるよう政府の計画を改めて見直し、抜本的な対策を具体化するとともに、京都議定書後の計画づくりでもイニシアチブを発揮することが求められます。
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