2008年3月1日(土)「しんぶん赤旗」
崩れゆく有志連合
イラク「多国籍」軍 いまや米兵93%
米主導のイラク駐留多国籍軍=有志連合の崩壊が進んでいます。最大三十九カ国が参加した多国籍軍は現在二十一カ国に参加が半減し、駐留継続国の中でも撤退・削減を予定・計画している国が多数です。「多国籍」とはいえ、いまや兵力の約93%は米兵で、実態は米軍そのものです。
二〇〇三年三月二十日に始まったイラク侵略戦争に直接参加したのは米英両国とポーランド、オーストラリアの四カ国。しかし、この五年間、撤退国が相次ぎ、完全撤退国は十八カ国になりました。スペイン、イタリアなどではイラク戦争を主要な争点とした選挙で政権が交代した結果の撤退でした。
侵攻に直接参加したオーストラリアでも昨年十二月の総選挙で労働党政権が誕生。ラッド首相は今年六月までに戦闘部隊を撤退させると表明しました。ブッシュ米大統領の「盟友」ブレア首相もイラク問題などを大きな理由の一つとして退陣を余儀なくされました。後継のブラウン首相は今年春までに駐留軍を半減させるとしています。
イラクへの派兵国で、これまで駐留軍を削減した国や今後削減・撤退を予定・計画している国は米国を除き十四カ国。そのうち、エルサルバドルは二月五日、サカ大統領が近く完全撤退をすると表明しました。米国は七月末までに部分撤退を予定していますが、昨年一月の増派以前の十三万八千人をなお上回ります。
国連憲章の平和の秩序を真っ向から踏みにじったこの戦争を国連は当初、容認しませんでした。米国は「有志連合」として戦争を開始し、その後、安保理は〇四年六月、決議一五四六で「有志連合」を多国籍軍として「お墨付き」を与えました。
国連安保理は昨年十二月、イラク政府の要請を受けて、多国籍軍の駐留を今年末までとする決議を採択しました。これは〇四年の決議一五四六に、国際世論の圧力で多国籍軍の駐留にはイラク政府の同意が必要であるとの項目が盛り込まれたからでした。
米国はイラク政府との間で、今年夏以降の米軍のイラク駐留継続についての協定を結ぶ構えです。米軍の長期駐留を狙うものですが、有志連合の崩壊もイラクとの協議の背景の一つです。(伴安弘)
■イラク撤退国 18カ国( )内は最大兵力
2004年撤退 ニカラグア(230人)、スペイン(1300人)、ホンジュラス(380人)、ドミニカ共和国(302人)、フィリピン(51人)、タイ(423人)、ニュージーランド(61人)、トンガ(45人)
05年撤退 ポルトガル(128人)、ハンガリー(300人)、シンガポール(200人)、オランダ(1345人)、ウクライナ(2000人)
06年撤退 ノルウェー(150人)、イタリア(3200人)
07年撤退 リトアニア(120人)、スロバキア(110人)、ラトビア(139人、3人が連絡要員として残留)
■駐留国 21カ国(*は今後も撤退・削減を予定・計画している国)
米国* 156000人(侵攻時25万人、7月までに14万人に)
英国* 4500人(侵攻時45000人、今年春に2500人に削減予定)
ポーランド* 900人(侵攻時194人、最大2500人、今年半ばまたは10月までに撤退を計画)
オーストラリア* 1575人(侵攻時2000人、うち戦闘部隊550人の撤退を今年6月までに予定)
グルジア* 2000人(今年夏までに300人を削減する計画も)
韓国 933人(最大3600人)
ルーマニア 397人(最大730人)
エルサルバドル* 280人(最大380人、近く完全撤退)
日本 約210人(04年3月、航空自衛隊隊員とC130輸送機3機を派兵、クウェートを拠点にイラクで活動。陸上自衛隊600人は06年7月に撤退)
ブルガリア 155人(最大485人)
モンゴル 100人(最大180人)
チェコ* 99人(最大300人、さらに80人の削減を今年夏に予定)
アゼルバイジャン 88人(最大250)
デンマーク 50人(最大545人)
モルドバ 11人(最大24人)
アルバニア 120人
アルメニア 46人
ボスニア・ヘルツェゴビナ 37人
エストニア 35人
マケドニア 33人
カザフスタン 29人
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