2008年2月22日(金)「しんぶん赤旗」

イージス艦衝突

「30分前 発見できた」

漁船長ら反論 「『あたご』は直進」


図

 海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」がマグロはえ縄船「清徳丸」に衝突した事故で、清徳丸とともに出漁していた僚船の船長らが二十一日、千葉県勝浦市の川津漁港で記者会見しました。船長らは、あたごが漁船発見を衝突十二分前としていることについて、「衝突三十分前には漁船群を発見していたはず」と強調。「あたごは、まったくの直進で進路を変えなかった」と回避行動をとらなかったことを批判しました。

 船団の先頭を走っていたという「幸運丸」の堀川宣明船長(51)は、「あたごを(自船のレーダーで)確認したのは、せがれと舵(かじ)を交代した(十九日の)午前三時三十分。あたごは自分らよりはるかに性能のいいレーダーを積んでいるわけなんですよ。それは十二分前に確認できたなんていうのは違うと思う。もっとレーダーをみていれば確認できたんじゃないですか」と証言。さらに、あたごが直進を続け、進路を変えなかったことを明らかにしました。

 外記(げき)栄太郎・新勝浦市漁協組合長は、自衛隊側が「衝突前に(船の右舷にある)緑の灯火を視認した」としている点についても、「船団の進行方向を考えると、(左舷の)赤の灯火が複数見えているはず。もし見えていなかったなら、見張りが十分ではなかった」と指摘しました。

 「金平丸」の市原義次船長(54)も「よほど目が悪くなければ、五マイル(約九キロ)くらいの距離から灯火は見えるはず。監視態勢が全然なかったんだろう」とした上で、「自分は回避のため左にかじを切ったので、(イージス艦が見た)緑の灯火は自分の船のものだと思う」と話しました。

 この日、謝罪に訪れた石破茂防衛相は、清徳丸船長の吉清治夫さん(58)、哲大さん(23)の親族らに二人の捜索や原因究明、再発防止に全力をあげる考えを表明しました。親族らからは「いろんな情報が出てくるが、それは(自らを)正当化しているのではないか」などと不信感を示す声が出され、外記組合長も「徹底して原因を究明してほしい」と注文しました。


新勝浦市漁協の会見(要旨)

回避義務「あたご」に/レーダーで見えたはず

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」が衝突した清徳丸とともに出漁していた僚船の船長と漁協幹部が二十一日、千葉県勝浦市で会見した要旨は次のとおりです。

写真

(写真)あたごとの衝突を回避した様子を語る金平丸の市原義次船長=21日、勝浦市川津

 外記(げき)栄太郎・新勝浦市漁協組合長 海自は緑の明かりを一つ見たといっていますけども当時は結構な数の船が赤い光(左舷側)を見せながら走っていたはずであります。緑の明かりは普通はないはずでございますけども、緑を見たというなら、金平丸があたごを危ないかなと取りかじ(左折)をとった。この金平丸の光を見たというのが連日の報道で自衛隊がいっていることだと思う。

 問題はみんな赤灯をみせながらみんな走っているのにだね、あたごの見張りが十分であればね、こんな衝突は起こらないと思います。十数人見張りがいたといわれていますが、それがまったくの見張り不十分、というのが事実ではないか。

 相手はでっかい船なんだから開けろという考えがあるかもしれません。それはまったく間違いであって、海上衝突予防法からいって、あたごの方がでっかいですけども、「避航船」だったと思います。

 僚船の先頭位置にあった幸運丸の堀川宣明船長 あたごを確認したのは、せがれとかじを交代した(十九日の)午前三時三十分。レーダーで確認した距離(あたごまで)は六マイル(約十一キロ)ありました。南西に方向をとったが、このまま進むと衝突の危険があると、一番接近したのが一・五マイルですかね。その時間が四時ころだったと思います。右に回避しまして、あたごの赤の左舷灯を確認できましたので、もとの方向に戻しました。

 その五分後、いまとなってわかったのですが、あたごの船から探照灯ですか、パッ、パッ、パと光るやつ、それが四、五回出ました。後方に走っていたと思われる清徳丸が衝突したのではないかと思われます。

 (緑を見たあたごの証言はうそか)そうですね。緑なわけがないと思います。あたごははるかに自分らより性能のいいレーダーを積んでいるわけなんですよ。それは十二分前に確認できたなんていうのは違うと思う。もっとレーダーをみていれば確認できたんじゃないですか。レーダーで確認後もあたごはまったくの直進で、進路を変えることもありませんでした。

 いまとなっては後悔しているんですけど、後方の船にこういう船が来たよ、危ないよと無線連絡をしなかったんですよ。一番後悔しているところです。

 金平丸の市原義次船長 あたごの青(右舷の緑灯火)を見ながらずっと走っていて、前をかわそうと思ったがかわせないと思って左に舵(かじ)をとりました。コースを変えた直後、あたごの作業灯がぱっとついた。

 大型船はレーダーは一基でないはず。近くをうつすレーダーと遠くをうつすレーダーを持っているんで、三十分以上、一時間も前から、絶対に確認は取れるはずなんです。いわれるような時間帯で確認したのは、レーダーを見てなかった。あたごはほとんど舵を切っていませんから。へさきと両舷にたっていれば、漁船の明かりは絶対といっていいほど見えるはずです。

 (要するに船乗り失格ということか)そうです。

 大型船は、回避するのは時間がかかるわけですよ。だから小型船がよけてくれる、そういうような考えでいるんじゃないか。

 (これまでも危険なことは)ありますね。結局、こっちが(進路を保持できる)権利船であっても、当たる危険をいつでも持ってますから。(あたごは)全然みていなかったんでしょう。監視体制が全然なかったんだと思います。

 (自衛艦は海のルールをふだんから守らないのか)そういう感じで思っている。



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