2008年2月21日(木)「しんぶん赤旗」

主張

税制法案

「生活者重視」がどこにある


 二〇〇八年度予算案に連動した税制関連法案の審議が、衆院の財務金融委員会で始まりました。

 福田内閣は税制関連法案の提案理由を、現在の経済・財政状況を踏まえて「持続的な経済社会の活性化を実現する」ためと説明しています。

 そうだとするなら法案は、まったく反対の方向を向いています。

家計の活性化こそ

 日本経済の課題として、福田康夫首相は「日本経済の現状を見ると、賃金がなかなか上がらず、消費に弱さがある」(一月の経済財政諮問会議)ことをあげています。さらに昨年の「経済財政白書」は、景気の持続力が維持される条件として「家計所得の増加」をあげています。

 提案理由でのべているように、経済の現状を踏まえ、持続的な経済活性化を図るのなら、暮らしの活性化こそ最大のテーマになるはずです。

 ところが政府・与党は、家計には所得税・住民税の定率減税廃止などで増税を押し付けておきながら、大企業には減税を拡大する本末転倒のやり方を続けています。

 法案は、減税額の約九割が大企業に集中する研究開発減税の拡充を盛り込みました。多額の研究開発費を使うトヨタやキヤノンのような有数の大企業は、法人税額を最大で三割圧縮できるようになります。これら大企業の法人税率は、30%の三割に相当する9%分が減税されて21%となり、中小企業の軽減税率の22%よりも軽くなる超優遇税制です。

 福田内閣は、「大企業が栄えれば、やがて家計に波及する」という従来の「成長」シナリオを、月例経済報告から削除せざるを得なくなっています。政府のシナリオが破たんしたいま、国民生活を活性化するには、家計を直接応援する経済政策に切り替える以外に道はありません。

 そのためにも、ガソリン税など道路特定財源を一般財源化し、道路だけでなく暮らしや社会保障にも使えるようにすることは重要です。

 税制法案は本来の税率を倍にしているガソリン税などの「暫定税率」を、道路中期計画の財源として十年間も延長するとしています。大型プロジェクトを中心とした五十九兆円もの道路中期計画を、ほかの何より優先するのはあまりにも異常です。

 「恒久的」とうたった定率減税は早々と廃止する一方、道路建設のための「暫定税率」を「恒久的」に継続する自公政治には、「生活者重視」を語る資格はありません。

 わずか税率10%に軽減する証券減税を株売買益は年内、配当では来年度末まで続ける上、その後も形を変えて残します。大資産家には目いっぱいの優遇です。

消費税増税が追い打ち

 「大企業・大資産家に減税、貯金もできない庶民に増税」の「逆立ち」した税制は、これにとどまりません。福田首相が施政方針演説ではっきりのべたように、消費税を含む税制の抜本「改革」の「早期実現」をめざしていることです。

 税制法案は格差是正の名目で地方の法人事業税の半分を国税にして再配分するとし、この措置を消費税増税と地方法人税「改革」までの「暫定措置」としています。これは、消費税増税を財源に、地方法人税の減税と法人実効税率の引き下げを求める財界の主張に従った方向です。

 「逆立ち」をますますひどくし、貧困に追い打ちをかける税制改悪は撤回すべきです。空前の利益をあげている大企業や大資産家に応分の負担を求め、庶民の税負担を軽減して「逆立ち」税制を正すことこそ必要です。



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