2008年2月19日(火)「しんぶん赤旗」
子どもと家族の応援?
政府の少子化対策とは― (3)
中心は保育制度改変
政府の「『子どもと家族を応援する日本』重点戦略」の二つめの柱は、「包括的な次世代育成支援の枠組みの構築」です。
国民が希望する結婚・出産・子育てを支える社会的な基盤構築のための三つの枠組みが必要としています。▽仕事と子育ての両立支援▽健やかな育成を支える対個人給付・サービス▽健やかな育成の基盤となる地域のとりくみ―です。
営利にゆだね
メニューには、育児休業、保育・放課後児童クラブ、就労・非就労にかかわりない預かりサービス支援などが並んでいます。
しかし、政府の規制改革会議「第二次答申」(〇七年十二月二十五日)をみると、「枠組み構築」の中心が保育制度の改変であることがいっそう明確になります。「第二次答申」はこういっています。
「児童福祉法の改正により保育の実施が保護者からの申込みを前提とすることとなったとは言え、旧態依然とした『措置』の発想の下、官が保育サービスを配給するという実態に変わりはなく、現行の保育制度を抜本的に改革し、多様なニーズに応える様々な子育て支援サービスを多面的に拡充していくことこそが重要であると考える」
そして保育所と利用者の間での「直接契約方式」などの導入を、今後の包括的な次世代育成支援の枠組みの構築のなかで検討すべきといっています。政府は、一九九七年の児童福祉法の改悪で国と自治体の責任をしめす「措置」という言葉をなくしました。これは、国や自治体の責任で保育をおこなうという制度の根幹を切り崩そうとするものでした。しかし、国民のたたかいによって保育所入所への市町村の関与をとりはらうことはできませんでした。
父母と園との「直接契約方式」の導入は、安全、安心の保育を保障する国と自治体の責任をなげすてるものです。「重点戦略」「第二次答申」が強調している認定子ども園制度にはすでに直接契約方式が導入されています。
また、「第二次答申」は園児一人あたりの保育士や面積・園庭などを定めた「最低基準」の見直しもかかげています。その先例としているのが東京都の認証保育制度です。
この制度は国の最低基準を引き下げ、直接契約制度もとっています。高い保育料、狭い施設、無資格者の施設長がいるなど、保育の質の低下をまねき、営利企業の参入優先だという批判の声がひろがっているものです。なぜこんなことをやろうとしているのでしょうか。背景にあるのは財界の要求です。日本経団連は、一貫して保育への企業参入と事業拡大のために自治体の関与をなくし、「直接契約方式」の導入をもとめてきました。最近の提言では、東京の認証保育所を参考にした保育料の設定、施設整備をすすめる民間事業者への財政支援、面積基準や保育従業職員の資格基準の緩和、駅前保育を設置しやすくするための容積率の規制緩和や保育事業者への賃料補助などをかかげています。
財界は、これらが女性労働力の活用戦略のために必要だといっています。労働力確保のための保育所づくりを企業参入、事業拡大の方向ですすめようとしているのです。
要求にも逆行
全国保育団体連絡会などがすすめる“国と自治体の責任による保育制度の堅持・拡充”“直接入所方式の導入反対”などの国会請願署名は毎年約二百万人分よせられています。〇六年には衆参両院で請願採択されています。
また、世界では、「保育の権利」の法律への明記、保育料の無料化など公的な保育の拡充と質の向上が大きな流れになっています(OECD=経済協力開発機構「乳幼児期の教育と保育に関する調査報告書」二〇〇一年)。
「重点戦略」「第二次答申」の方向は、国民の願いにも世界の流れにも逆行しています。(つづく)(女性委員会)