2008年2月16日(土)「しんぶん赤旗」

数百億円の追加出資

破たんの新銀行東京 知事が方針表明


 東京都の石原慎太郎知事は十五日の記者会見で、都が一千億円の税金を出資した新銀行東京(本店・東京都千代田区、津島隆一代表執行役)に新たに追加出資を行う考えを明らかにしました。追加出資の規模は数百億円にのぼるとみられます。

 同行は石原知事の肝いりで二〇〇五年四月に開業し、〇七年九月中間期の決算で累積損失が九百三十六億円に達するなど破たん状態にあります。追加出資について石原知事はこれまで「考えていない」とのべてきました。

 この日の記者会見で、石原知事は「最終的にしかるべき報告を受けたうえで結論を出し、まず議会にはかりたい」とのべ、二十日開会の都議会第一回定例会に提案することを言明しました。

 知事はさらに、トヨタ自動車出身の仁司泰正氏ら開業当時の旧経営陣(昨年六月更迭)について、「ちょっと常識から外れた運営がなされていた」と表明。記者団から自身の任命責任を問われると、「経団連の重鎮から推薦を受け、安心して引き受けた。日本を代表する経済界の推薦を、私たち信用して引き受けざるを得ない」と責任を転嫁しました。


破たん処理ただちに

税金は都民施策に回せ

 石原慎太郎東京都知事が十五日に表明した新銀行東京(代表執行役・津島隆一前都港湾局長)への追加出資は、「税金をどぶに捨てるような愚挙だ」「石原知事は責任をとるべきだ」と大きな批判につつまれています。(岡部裕三)

 新銀行東京の岡田至執行役(東京都派遣)は十五日午後、「取締役会では、(追加融資については)何も決まっていない」と言明。一部役員が取締役会にも諮らず、石原知事サイドに追加出資を打診していた疑いが明るみにでました。

 都が、再建の見通しがない新銀行に数百億円を追加出資することは、まさしく無謀な計画です。それに加え、石原知事が何度も「追加出資はしない」と言明してきた言を翻したことにも、不信の声が募るのは当然です。

 新銀行は、石原知事のトップダウンで、都が一千億円を出資し、〇五年四月に開業しました。開業二年目の〇七年三月期決算で五百四十七億円の単年度赤字をだし、決算書も「継続企業の前提に重要な疑義が存在」と、経営破たん状態を認めているほどです。

 経営不振の責任をとって、昨年六月に代表執行役の仁司泰正氏(トヨタ自動車出身)が引責辞任、後任の森田徹氏(りそな銀行出身)は同十一月に病気を理由に辞任、津島隆一氏(前東京都港湾局長)が後任に就任し、一年間で三人も交代する混迷ぶりです。

 昨年六月に経営再建策(新中期計画)を策定したにもかかわらず、同九月中間決算では累積損失が九百三十六億円にふくれあがり、都出資分の九割が棄損する状態です。

 その経営再建策も、一年たたないうちに撤回に追い込まれ、追加出資を要請するというずさんさです。経営再建初年度にあたる〇八年三月期決算の前に、追加出資を求めるというのも、道理が通りません。

◇…◇

 新銀行への出資予算を審議した〇四年三月都議会。出資を取りやめるよう迫った日本共産党の木村陽治都議(当時)に対し、石原知事は「今回出資する一千億円が、やがては数兆の値になると信じております」(三月二日)と答弁していました。追加出資にいたるこの間の経過を見れば、まさしく大言壮語の見本です。

 石原知事は「中小企業を支援する」とのふれこみで新銀行を設立したものの、中小企業への融資比率は〇五年九月の97・5%から、〇七年九月には47・2%と大きく後退。中小企業支援の名目すら放棄しています。

 二十日に開会する都議会第一回定例会では、〇八年度予算案やオリンピック招致とともに、新銀行への増資案が焦点となります。

 石原知事が編成した都予算案(一般会計六兆八千五百六十億円)は、豊富な財源をオリンピック東京招致事業や大型開発優先とためこみに使い、くらし、教育、中小企業など都民支援策は抑え込みました。貧困と格差拡大でくらし応援の予算が自治体に求められるなか、無謀な新銀行への支援に都民の批判が広がることは必至です。

◇…◇

 新銀行への追加出資方針に、一千億円出資に賛成した都議会与党にも動揺が走りました。ある与党都議は「一千億円は税金をドブに捨てたようなものだ。有権者に説明ができない」と困り果てた様子です。

 新銀行東京に一貫して反対してきた日本共産党都議団の提言は明快です。十三日には、(1)いかなる追加出資も行わない(2)直ちに第三者機関を設置し、破たん処理に踏み出す(3)知事の責任を明確にするとともに、今後の処理方針を都民と議会に全面的に説明する―ことを、石原知事に申し入れました。

 巨額のむだ遣いをすすめてきた石原知事と、「夢とロマンの持てるような新銀行だ」などといって後押ししてきた自民党、民主党、公明党の責任は重大です。石原知事は新たな支援策はやめ、責任をとって無謀な銀行経営から直ちに手を引くべきです。


 新銀行東京 石原慎太郎東京都知事が二〇〇三年の知事選で設立を公約。都が一千億円を出資し〇四年四月に設立、〇五年四月に開業。民間企業の出資は、日立製作所、オリックス、鹿島、大成建設など約百八十七億円。赤字決算が続き、〇七年九月中間決算で、累積赤字が九百三十六億円にふくらみ、破たん状態に陥りました。


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