2008年2月16日(土)「しんぶん赤旗」
学習指導要領 改定案
現場は がんじがらめ
教師の自主性保障こそ
指導法まで
今回発表された学習指導要領の改定案は、冒頭に改悪された教育基本法を掲載したことに象徴されるように、改悪教基法の具体化の一つです。
改定案がこれまでと大きく違っているのは、各教科の指導内容を示すだけでなく、指導法まで指示していることです。
例えば算数・数学では新たに「算数的活動」「数学的活動」を全学年でやることになりました。そこには「図形をかいたり、作ったり、それらで平面を敷き詰めたりする」など細かな指導法が何項目も書かれています。
国語でも「経験したことを報告する文章や観察したことを記録する文章を書く」「グループで話し合って考えを一つにまとめたりする」(いずれも小学一、二年)などの「言語活動」が各学年で盛り込まれました。
このような指導自体はこれまでもそれぞれの教師が子どもの状況をみながら実践してきたことです。しかし、学習指導要領に書き込まれれば、教科書に同様の内容がより具体化されて盛り込まれ、教師は子どもの状況などにかかわりなく、必ずやるように点検・指導を受けることになります。
今回の改定案の元となった中央教育審議会の「学習指導要領等の改善について」の答申では、各教科で「思考力・判断力・表現力」を育成するための活動として、「考えをまとめてA4・一枚(千字程度)で表現する」といったきわめて細かいことまで例示されており、こうしたことが文科省の指導などを通じて現場に押しつけられる可能性があります。
チェックも
さらに重大なことは、今回改定される学習指導要領通りに学校で教師に実施させ、それをチェックする仕組みがつくられようとしていることです。
中教審の答申は「教育課程行政においてPDCAサイクルを確立する」とのべています。PDCAサイクルは、もともと製造工程で品質管理をするシステムで、Pはプラン=目標・計画、Dはドゥー=実行、Cはチェック=点検・評価、Aはアクション=活動の改善を表します。
文科省が学習指導要領で目標・計画(プラン)を定め、それを教員が実行(ドゥー)した結果を全国学力テストや学校評価を通して行政が点検(チェック)し、十分やられていないと判断された現場に「改善」を求める仕組み―これが中教審のいうPDCAサイクルです。実施されれば、これまで以上に教育現場が縛られることは必至です。
学習指導要領は改定のたびに内容が増やされたり、削られたりして、大きくゆれてきました。そのたびに現場は振り回され、混乱させられています。
特に前回の改定では各教科の必要な学習内容を削り、現場から悲鳴が上がりました。今回はこれらの内容がもとに戻りましたが、その総括はありません。逆に「増えた内容をわずかに増えた時間でこなすのは無理」(数学教育関係者)との声が出ています。
いま必要なのは、指導要領の内容は本当に大切なものに精選し、あくまで試案として教師が参考にするものと位置付けることです。国は少人数学級などの条件を整備し、現場の教師が地域や子どもの実情に応じて自主的に工夫した授業を、じっくり時間をかけてやれるようにするべきです。そうしてこそ子どもが楽しく学んで、確かな学力をつけることができます。(高間史人)
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