2008年2月13日(水)「しんぶん赤旗」
米軍イラク駐留継続
7月決定に異論
撤退世論の反映
米下院外交委小委
【ワシントン=西村央】米軍のイラク駐留の継続やその形態について、今年七月末までにイラクとの間で合意をめざすとした昨年十一月の「基本原則文書」に基づいて、米議会のなかで議論が続けられています。八日開かれた下院外交委員会の小委員会のなかでは、議員の間から、次期大統領の手を縛るようなことを急ぐべきではないという声や、議会の意思を尊重すべきだとの声が出ています。
「基本原則文書」は二〇〇七年十一月二十六日にブッシュ大統領がイラクのマリキ首相との間で、ワシントンとバグダッドを結ぶテレビ会議を開き、ここで〇八年七月末に合意をめざすイラク駐留の規模や期間についての交渉の基本原則を定めたものです。
八日の下院外交委員会小委員会での公聴会は、駐留のあり方や法律に基づく議会との協議、必要な手続きなどについて、退役軍人や法学者などについて見解を聞くために開きましたが、出席した議員の意見表明は駐留延長に厳しいものがありました。
民主党のデルーロ議員は、ゲーツ国防長官が米軍のイラク駐留は朝鮮戦争休戦後の在韓米軍をモデルとして考えると述べていたことを取り上げ、「こうした安全保障上の関与の仕方や、今回の基本原則文書に沿って(駐留延長での決定を)すすめることには強い懸念を持つ」と表明。「ブッシュ大統領は、次期大統領にたいして駐留問題を一方的に押し付けることは許されない」として、新政権発足前に駐留のあり方を固めてしまおうとするブッシュ政権を強く批判しました。
さらに同議員は、「いま米国人の過半数が早期に撤退すべきと考えており、そもそも(〇六年選挙で選出された)この議会構成にはイラク戦争への不同意が反映されている」として、派兵延長は国民の意思にも反することを指摘しました。
共和党のローラバッカー議員は、イラク派兵に賛成であるとしながらも、駐留延長問題が議会とのオープンな議論をせずに進められていることを批判。「こうした長期的な関与や戦略にかかわる問題で、オープンな議論がなされるかそうでないかは、この国の将来にかかわることである」と指摘して、議会との密接な協議を要求。「ジョージ・ブッシュは米国の国王として大統領に選ばれたわけではない」と皮肉をこめました。
委員会でデラハント委員長は、イラクでの米兵死者がすでに四千人近くとなり、数万人が重傷を負い、イラクの側でも数万の市民が犠牲になっていることをあげ、「いまなお、先が見えていない」と現状についてのべました。
こうした外交委員会小委員会での意見表明は、イラク戦争の継続が争点となっている大統領選挙の結果を待たずに、強引に継続のあり方を決めてしまおうというブッシュ政権への強い懸念と言えます。委員会でのこの問題の協議はなお続けられます。
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