2008年2月10日(日)「しんぶん赤旗」
主張
毒入りギョーザ
真相の究明が信頼を回復する
中国から輸入された冷凍ギョーザを食べ、混入していた農薬による中毒事件が発生していたことが明らかになってから十日がすぎました。
この間、被害の全体を把握し、原因を突き止めるための調査や捜査が日中両国で行われてきましたが、いまだに全容の解明にはいたっていません。製造・出荷、流通のどの段階で農薬が混入したのか、それは過失だったのか故意によるものだったのかなど、真相を突き止め対策をとることが、輸入食品についての消費者の信頼回復に不可欠です。
いつ、どこで混入?
これまでの調査で、農薬の混入は繰り返し行われていた可能性が高いことが明らかになっています。
昨年末からことし初めにかけ兵庫や大阪のスーパーで売られていた冷凍ギョーザと、千葉の生協で売られていた製造日の異なる冷凍ギョーザに混入されていた農薬は、「メタミドホス」という殺虫剤の成分でした。ところがその後明らかになった、福島の生協で売られていた冷凍ギョーザに混入されていたのは、別の「ジクロルポス」で、溶剤に使われたと見られるベンゼンやトルエンも同時に見つかっていました。
全国各地で冷凍ギョーザを食べ異常を感じたとの訴えが相次いでいます。まだ入院の続いている人もいます。農薬混入は被害の大きさの点でも、きわめて重大な問題です。
最初に懸念されたのは材料となる野菜への農薬の残留ですが、検出された成分量が多すぎることから、それは否定されました。日本各地で混入が見つかっていることから、日本に運び込まれてからの混入の可能性も低いとみられています。
農薬は、ギョーザの皮や包装用の袋から見つかっています。ギョーザは食材を皮で包み加熱した後、冷凍され、包装、出荷されていました。その間に農薬が混入した可能性は大きく、徹底して調査されるべきです。
中国の製造工場では、「メタミドホス」も「ジクロルポス」も使われていなかったといわれます。そうなれば、誰かが故意に混入させたのか、事件としての捜査も不可欠です。
問題は農薬がどのように混入したのか、直接の原因を追究すればそれでよしとはなりません。消費者が口にする食品の安全確保は二重三重にというのが原則です。過失であっても故意であってもなぜ混入が防げなかったのか、被害が繰り返されたのはなぜかについても、当然解明の努力がつくされるべきです。
問題の冷凍ギョーザは、日本の商社「双日」と食品事業を拡大している「JT」(日本たばこ産業)のそれぞれの子会社が企画、中国の企業に製造を委託したものです。今回の事件を通じて明らかになったのは、「双日」も「JT」も満足な検査をおこなわず、監督責任を果たしていなかったことです。「JT」がスーパーや生協から苦情があっても農薬の検査もしていなかったというのは驚くばかりで、商社や輸入企業などの体制についても解明が不可欠です。
輸入食品検査の責任
もちろん、国民の安全確保は政府の責任であり、検疫など、輸入食品にたいする政府の検査体制の問題が第一に問われなければならないのは論をまちません。
真相の解明が徹底しておこなわれ、今度のような農薬の混入が二度と繰り返されず、たとえ混入しても消費者に渡ることはないとなってはじめて、安心して口にできます。そのために手段をつくすべき政府の責任は極めて重いものがあります。