2008年2月9日(土)「しんぶん赤旗」
派遣法改正し“労働者保護法”に
人間“使い捨て”では未来ない
衆院予算委 志位委員長が気迫の質問
「労働者派遣法を“派遣労働者保護法”へと抜本的に改正すべきだ」―。日本共産党の志位和夫委員長は八日、衆院予算委員会で基本的質疑に立ち、人間をモノのように使い捨てにする派遣労働の深刻な実態を告発、労働者を守らない派遣法の問題点を具体的に指摘し、福田康夫首相にこう迫りました。与野党席からも「いい質問だ」「その通りだ」の声が上がった気迫の質問に、首相も一定の前向きな答弁をせざるをえませんでした。
- 《関連》派遣労働の規制強化へ舵切り替える時/志位質問 雇用破壊の根本ただす
首相“日雇い派遣好ましくない”
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志位氏はまず、派遣労働の中で最も不安定・無権利のもとにおかれている日雇い派遣の実態を示しました。
「倉庫作業といわれていったら冷凍倉庫。軍手しか持っていかなかったので半日で両手とも凍傷になった」…。
日雇い派遣の非人間性を労働者の生の声で告発する志位氏に、首相は「日雇い派遣は好ましくない」と答弁しました。
志位氏は、現行の派遣法の問題点を厳しく指摘しました。派遣最大手のグッドウィルが違法行為を繰り返し事業停止命令を受けた事件では、派遣業の許可をとっている会社は刑事告発を免れ、派遣先企業は企業名の公表も勧告も受けていません。一方、「偽装請負」で働かされていた労働者のうち、厚労省の是正指導後に正社員になれたのはわずか0・2%です。
「派遣元企業・派遣先企業は保護するが、労働者は保護しない。おかしいと思わないのか」と迫る志位氏に、首相は「雇用が失われないよう指導する」と答弁しました。
志位氏はさらに、現行派遣法には「根本的問題がある」と強調。政府は、「正社員から派遣への置き換えの禁止」を原則とし、その担保として「派遣期間の制限」を設けています。しかし、実際には「短期の雇用契約を繰り返し更新する」「『班』『係』を変える」などのやり方が横行。違法が摘発されても、正社員になれた労働者は一人もいないのが実態です。
志位氏は「実効ある措置が何一つない」と述べ、派遣法が原則自由化されて以降、正社員が減り、派遣労働者が増えつづけている事実(グラフ)を指摘。その実例として精密機器メーカー・キヤノンの雇用実態を告発しました。
志位氏が示した同社の内部資料は「外部要員の活用は…労働コスト面からも非常に有益」と、リストラのための派遣導入を“告白”しています。実際、大分県のキヤノンマテリアルでは直接雇用千百六十人に対し、派遣・請負千七百二十人と半数以上を占めます。
志位氏は「手元に残る給料は十万円以下、健康保険にも年金にも入れない」と訴える若者の叫びを紹介し、「『世界のキヤノン』といわれる製品を作っている労働者がこういう状態におかれている」とただしました。首相は「実態がどうなっているのか厚労省に確認させる」と表明しました。
最後に志位氏はILO(国際労働機関)のリポートも紹介しながら、「非正規雇用を放置していては、日本社会の未来がない」と労働法制の規制強化を主張。福田首相は「中長期的に見て、若者の不安定雇用は良くない。政府も気配りしていきたい」と答えました。
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「絶望の中で一筋の光」
キヤノン元派遣労働者
キヤノンの電子工場で派遣で働いていた人から、日本共産党の志位委員長の質問に、「将来が見えず、不安で仕方ありません。世の中こんなものだと絶望していましたが、志位さんの質問を見て、一筋の光が見えた気がします」というメールが届きました。
「ライン主任を任されていましたが、私以外全員外国人でした。深夜の残業は当たり前。毎週のように休日出勤。『代わりはいくらでもいる』がキヤノンの口癖です。あるとき私のラインの人が流産しましたが、次の日には仕事にきていました。休んだらもう仕事がないですから。こんな会社が国際優良銘柄であってはならないと思います」と現場を告発しています。
労働者派遣法 非正規雇用を増大させ、ワーキングプアの温床となっているのが、労働者派遣法です。雇用は直接雇用が原則であり、労働者を他の企業に派遣して賃金を「ピンはね」することは、労働基準法などで禁止されていました。しかし、一九八五年に労働者派遣法が制定され、九九年には原則自由化、二〇〇三年には製造業にも解禁され、ほとんどの業務に労働者を派遣することができるようになっています。
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