2008年2月8日(金)「しんぶん赤旗」

「君が代」強制に歯止め

不起立訴訟

都に賠償命じる

東京地裁 職務命令は「合憲」


 卒業式などで「君が代」の起立斉唱を命じた職務命令に違反したことを理由に、東京都教育委員会が退職後の嘱託採用を拒否したのは違憲・違法だとして、元都立高校教職員十三人が損害賠償を求めた裁判の判決で、東京地裁(中西茂裁判長)は七日、都に計約二千七百六十万円の賠償を命じました。


 中西裁判長は判決理由で、「原告らの行為は積極的に式典の妨害をするものではなく、勤務成績を決定的に左右するものではない」とし、「不合格は客観的合理性や社会的相当性を著しく欠き、都教委が裁量を逸脱、乱用した不法行為である」とのべました。

 一方、職務命令については「『国歌を斉唱するよう指導するものとする』と定める学習指導要領の趣旨にかない、思想・良心の自由を制約するものではない」とし、合憲と判断しました。

 原告らは都教委が「日の丸・君が代」を強制する通達を出した二〇〇三年十月以降の卒業式などで「君が代」斉唱時に起立せず、懲戒処分を受けました。その後、定年などで退職するにあたって嘱託としての採用を希望しましたが、不合格とされました。

 原告の一人、新井史子さんは「いまも高校生を見るたびに、こんなことさえなければ教室で教えていたはずだと思います。たった四十秒間の不起立で採用を拒否され憤りを感じてきました。違法だと認められたことは非常にうれしい。現場への影響も大きいと思う」と喜びを語りました。

 原告側弁護団は「通達や職務命令の違憲・違法性が認められなかったのは残念だが、都教委の強制に歯止めをかけた判決だ」と評価しました。

 都教委の「日の丸・君が代」強制については〇六年九月に東京地裁(難波孝一裁判長)が、通達は違憲で、教職員に起立斉唱の義務はないとの判断を示しています。

違憲判決勝ち取ろう

 卒業式を間近に控えて出された七日の東京地裁判決を受け、同日、都内で報告集会が開かれました。百人を超える支援者が集まり、原告、弁護団に温かい拍手を送りました。

 「判決でわれわれは歯止めを勝ち取った。さらに憲法違反だという判決を勝ち取るために頑張っていきたい」。弁護団は東京都教育委員会の裁量権乱用を厳しく指弾した判決を今後に生かしていこうと呼びかけました。

 都教委は都立学校の卒業式や入学式で「日の丸・君が代」を強制する「10・23」通達を二〇〇三年に出しました。原告らは同通達は憲法違反だとする判決を勝ち取りたいと、たたかい続けてきました。

 しかし、判決は通達や職務命令は合憲と判断しました。原告の一人は「正直、複雑(な気持ち)です」と切り出し、「裁判長の価値観をひっくり返していかなければいけない」と今後への決意を語りました。

 違憲判決を勝ち取れなかったことにがっかりする原告を弁護団は「判決の全文をよく読むと(今後の運動に)役立つところは必ずある。(裁判長は)われわれの主張も受け止めている。われわれは勝ったのだから前向きにとらえよう」と励ましました。

 都教委から懲戒処分を受けた人たちでつくる「被処分者の会」の教師は「原告十三人がたたかったからこそ今日の判決があった。不採用事件については非の打ちどころがない判決。確信を持って周りに訴えていき、他の裁判でも勝ち抜いていきたい」と語りました。



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