2008年2月8日(金)「しんぶん赤旗」

続消費税なぜなぜ問答

社会保障の財源を考える(12)

Q 増税すると「働く意欲」は?


 「大金持ち優遇はやめろ」と所得税を取りすぎると、「働く意欲がなくなるのでは?」という意見があります。どう考えたらいいのでしょうか。

 二〇〇五年の六月に出された政府税調の「個人所得課税に関する論点整理」は、定率減税廃止などの大増税を盛り込み、「サラリーマン増税」と批判されました。この報告を準備した政府税調の総会で、「庶民にだけ増税を押しつけてはバランスがとれないから、所得税の最高税率を引き上げては」という意見が何人もの委員から出されました。ところが、企業経営者出身の委員が「人間、働きがいということを考えると、50%取るのが限度だろう」と発言し、財務省の役人も「五公五民以上は出ないというのが大きな流れではないか」などといって、引き上げの意見に反論しています。結局、報告には「個人住民税とあわせて50%という現在の水準は、個人の勤労意欲・事業意欲の点から見て基本的に妥当なものと考えられる」という文章が盛り込まれたのです。

 しかし、これはとんでもない議論です。「五公五民」というのは、江戸時代に農民に課せられた過酷な年貢の取り立ての話です。現在でも、一般庶民に50%課税するというのなら重税ですが、大資産家は話が違います。かつて日本では最高税率が所得税で75%、住民税で18%という時期もありましたが、大資産家が事業意欲をなくすこともなく、日本は高度成長を続けてきました。

 そもそも、「税率50%」といっても、収入のすべてに50%がかかるわけではありません。実際の負担率は、社会保険料の負担を含めても、年収三千万円で34・4%、年収一億円でも43・6%です。これを多少引き上げたとしても、「やる気を失う」とはいえません。しかも、大資産家の場合は給与収入より配当や株式譲渡などの所得の方が多いのが普通です。株のもうけには10%、優遇税制がなくなっても20%しか税負担がありません。これは年収千二百万円くらいのサラリーマンの負担率より低くなっています。これでは、サラリーマンの方が「働く意欲」を失って、仕事中にパソコンで株取引をし出したりするのではないでしょうか。

 アメリカの雑誌が毎年、「日本のビリオネア(十億ドル以上の資産を持つ大資産家)」を発表しています。これを見ると、まともな会社の経営者もいますが、サラ金など国民の幸福にはあまり貢献していない業界が目立ちます。かりに、こういう大資産家の税を増やして「やる気を失った」としても、国民の暮らしにとっても、日本経済にとっても、ほとんどマイナスにはならないのではないでしょうか。(つづく)

グラフ

表


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