2008年2月4日(月)「しんぶん赤旗」

若手研究者の就職難

シンポ発言から (下)


 「若手研究者の就職難と劣悪な待遇の解決のためのシンポジウム」(二日、日本共産党学術・文化委員会主催)のパネリストの報告(要約)を昨日に続いて紹介します。


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文科行政の転換必要

一橋大学大学院社会学研究科教授

吉田 裕さん

 人文・社会科学系の大学の現場を一橋大学の事例で報告したい。大学院重点化前後の変化をみると、一九九六年から二〇〇七年にかけて大学院修士課程入学者数は二・八倍で教員数の伸びは一・一倍ですが、一九七八年度と〇七年度を比べると、修士課程入学者数で六・四倍、教員数は一・八倍で、がく然とします。

 重点化と大学法人化にともない、教員は多忙化し研究・教育に割ける時間が少なくなっています。大学の予算減に対処するため外部資金を獲得しなければならず、獲得してもその運用に追われる悪循環です。指導する大学院生の増大で、院生に対する指導も不十分なものとなっています。

 就職難も深刻で定員を超える博士がいます。高い授業料などによる生活も悪化しています。博士課程への進学志願者が〇五年から〇七年にかけてほぼ半減。若手研究者の養成が困難になり研究者の縮小再生産の段階に入っていると実感します。

 大学間格差の急激な拡大で、深刻な状況は加速されると考えます。就職支援も修士課程修了者で動き出していますが、博士課程の大学院生には手が打たれていません。

 文部科学行政の根本的転換がなければなりません。とくに人文系の大学の運営費交付金の大部分は人件費で、削減は予算面から教員ポストを減らさざるをえない状況が生まれています。なんとか解決しなければ科学技術体制の今後はありません。

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国が人件費479億円減

衆院議員 共産党副委員長

石井郁子さん

 昨年末に「若手研究者の就職難と待遇に関する質問主意書」を提出し、ポストドクター(非常勤研究員)や非常勤講師の実態調査を求めるとともに、政府の責任をただしました。

 就職難の背景に政府の「大学院生の倍加」政策があり、高等教育充実のための人員増や大学・研究機関の予算の抜本的拡充、民間企業などへの就職先の確保の対策を政府は怠ってきました。

 さらに「構造改革」路線にもとづく市場原理主義を学術の分野に持ち込み、研究費の削減・競争資金化などの政策で事態をいっそう深刻にしました。国立大学が法人化後に削減した人件費は四百七十九億円で、旧国立大学時代の助手の初任給の一万人分です。これだけ、助手や助教の採用を抑制しているのです。非正規雇用の増大は構造改革路線によるものです。

 当面の対策についての質問にたいし政府は、大学や研究機関による転職支援は「重要」と回答しています。政府の具体的な取り組みのいっそうの強化が求められます。大学教員の増員について政府は「業務の実施に必要な経費について適切に対応」すると答弁しています。日本の教員一人あたりの学生はイギリスの一・四倍、ドイツの一・七倍です。大学教員の増員は不可欠です。財源はあります。大学・公的研究機関の人件費削減を元に戻すだけで一万人の雇用が生まれます。

 若手研究者の深刻な実態を根本的に解決するには、当面の対策とともに政府の科学技術政策の根本的転換が必要だと考えます。


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