2008年2月4日(月)「しんぶん赤旗」

主張

後期高齢者医療

4月実施の強行は許されない


 二〇〇八年度は、二十三万床の療養病床の削減、公立病院の統合・廃止・縮小など、自民党と公明党が「改革」の名で〇六年に強行した医療改悪が本格的に動きだします。

 とりわけ、福田内閣が四月から実施しようとしている、七十五歳以上の高齢者を別枠の差別的な制度に追いやる後期高齢者医療制度には、全国で怒りがふきあがっています。

部分凍結のごまかし

 福田内閣は高齢者の負担のごく一部の一時的な凍結を打ち出していますが、こんな取り繕いそのものが制度の破たんを示しています。後期高齢者医療制度の中止・撤回、見直しを求める決議を上げた地方議会は約五百に上っています。

 決議の中身も、「高齢者の暮らしと健康保持にとって重大な悪影響を及ぼすことは必至」であり、「後期高齢者医療制度の実施を凍結するよう強く要望する」(福島県議会の意見書)、老後の生活を脅かす制度は「認めることが出来ません」(北海道・沼田町議会)、制度の一部凍結は「問題の先送りでしかありません」(鹿児島・奄美市議会)など、厳しい指摘と要求が目立っています。一時しのぎの部分凍結でごまかすことはできません。

 凍結対象は被扶養者として家族の健康保険に入っている高齢者です。四月から半年は保険料なし、続く半年は所得割を凍結、均等割は九割軽減、その後の一年間は引き続き所得割を凍結、均等割は五割の軽減になります。東京都の場合、均等割は三万七千八百円で、十月から三千七百八十円、来年四月からは二万円近い保険料が発生します。何より、二年過ぎれば凍結措置は“解凍”され、負担が一気に重くなります。

 それ以外の、国民健康保険の加入者の保険料に凍結措置はなく、さらにすべての後期高齢者の保険料は二年ごとに見直して連続的に値上げしていく計画です。

 この制度がもたらす深刻な問題は負担増だけではありません。

 診療報酬も若年世代と別建てにして保険医療を制限し、医療費を安く上げようとしています。「介護難民」「医療難民」が大きな社会問題になっているにもかかわらず、さらに高齢者を医療、病院から追い出そうという血も涙もないやり方です。「病院から無理な追い出しはしないと約束できるか」と問われた舛添要一厚生労働大臣は、あいまいな答弁に終始しました。

 もう一つの大きな問題は、保険料が年金から天引きされるようになることです。

 年金支給額が年十八万円(月一万五千円)以上の人で、介護保険料と合わせた保険料が年金の半分以下に収まる場合は、有無を言わせず天引きされてしまいます。七十五歳以上の後期高齢者医療制度の実施のどさくさにまぎれて、政府は六十五歳以上の高齢者についても国保料を年金から天引きするとしています。

制度そのものの中止を

 高齢者世帯の六割が年金だけしか収入がありません。なかでも年間所得が百万円未満の世帯では八割弱が年金だけで生活しています。生きるために最低限度の所得しかないのに保険料を天引きするのは、あまりに非人間的です。

 世界でも、国民皆保険の国で高齢者というだけで別枠の差別的な医療制度を設けるなどというのは、日本以外に例がありません。

 七十五歳という年齢を重ねただけで差別する後期高齢者医療制度は、制度そのものを中止するよう強く求めます。


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