2008年2月3日(日)「しんぶん赤旗」
ローカル紙からのエール今なぜ「赤旗」ですか
いぶし銀の輝きめざせ
山陽日日新聞・秋田清編集長に聞く
「赤旗の果たす役割はとてつもなく大きいものになるという見方が非常に現実味を帯びてきた世情になりつつあるのではないだろうか?」。今年はじめに、こんな“予測”をしたローカル紙があります。広島県尾道市を中心に発行されている山陽日日新聞です(一月十八日付)。昨年来「赤旗」の話題をたびたびとりあげてきた同紙の秋田清編集長(61)を尾道市に訪ねました。(小木曽陽司)
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山陽日日新聞は、タブロイド判四ページの夕刊紙。日祝日を除く毎日発行され、合併前の旧尾道市域を中心に約三千部が宅配されています。
創刊は「赤旗」(一九二八年)より三十年早い一八九八年(明治三十一年)で、ことしはちょうど百十周年。「地域紙としては最も古い歴史を持つ新聞の一つ」(秋田さん)です。
尾道市政をはじめ地域のきめこまかな情報と、時評やコラムが売り物の地域紙が、全国区の話題になったのは、昨年十二月のことです。同月一日付で「群を抜く『赤旗』の報道」という見出しの記事を一面トップで掲載したのです。
―私たちにとっては大きな励ましでしたが、一面トップとはなかなか大胆でした。
秋田 「伝えたいこと・伝えるべきこと・伝えなければならないこと」など報道の使命を十分果たしているメディアにやっと出合えた。「郵政解散」前、小泉首相が飛ぶ鳥を落とす勢いのとき、山陽日日は「構造改革」で地方の格差は拡大、弱者は切り捨てられるとキャンペーンをはったから、読者には免疫がついている。「赤旗」を一面でやることぐらい、どうってことはなかった。
―記事の中では、軍事利権を追及した連載「腐敗の聖域」に注目していましたね。
本質に迫った
秋田 防衛省の守屋事件を聞いたとき、たんなる「飲食接待事件」だと思った国民は一人もいなかったと思う。ところが、テレビや新聞は毎日「接待報道」中心で、へきえきとしていた。そのときに、「赤旗」の連載は、年間二兆円にのぼる装備品調達をめぐる防衛庁長官(当時)の影響力の大きさなど、その「構造」に迫った。「そうだ。知りたかったのは、これなんよ」と、留飲を下げたわけです。私が尾道でいくら大声を出しても、東京のことにまで手が出ない。その知りたい要求に「赤旗」が応えてくれたから共感したのです。
―「赤旗」紙面上でも、「赤旗」の役割を評価していただいた山陽日日の記事を紹介し、それをまた山陽日日が再紹介するという「キャッチボール」がありました。反響もいろいろあったようですね。
秋田 全国の共産党の議員さんたちから「新聞を送ってほしい」とか、「尾道に行く機会があれば寄せてもらう」、さらに「経営が苦しいでしょうががんばってください」という激励まであって、励まされました。つい最近のことですが、うちの読者からは、「赤旗」にこんな記事(注)が載っていたと、その記事のコピーに「地方紙や、赤旗を読まないと、国内外の公正な情報を得られないという日本の、特に四大商業紙のていたらく、危機感のなさ」とコメントをつけて、ファクスで送ってきました。
(注・一月十四日付国際面「日本の新テロ法可決 中東の利益に反する カイロ大教授 “自衛隊が占領軍支援”」の記事)
―マスメディアの多くが、真実を伝えるというジャーナリズムの使命を果たしていないことへの危機感は、その裏返しとして「赤旗」への期待を高めているようです。
報道の使命は
秋田 私は「負の連鎖」といっていますが、マスメディアは殺人とか凶悪事件など悪いこと、いやなことばかりを、大々的に報道しすぎている。ニュースのワイドショー化というか。これでは、そういう殺伐とした社会が当たり前の社会となってしまう。しかし、ジャーナリズムというのは、社会正義を確立する、世の中を良くする、人のためになることを使命としています。そのために国民が本当に知りたいことを伝える、記者が良心にかけて伝えなければならないことを伝える。そうしてこそ「正の連鎖」となるのではないでしょうか。「赤旗」には、ぜひそういうジャーナリズムの本道を歩んでほしいと思います。
―私たちも、創刊八十周年にあたって、命がけで真実の報道を貫いてきた歴史と伝統を引き継いでいきたいと決意しています。最後に、地域の視点から「赤旗」への注文を。
明るさを期待
秋田 あえていえば、もっと明るい新聞をつくってほしい。暗いニュースが多い中で「赤旗」まで暗くなったら救われない。読んだら元気になる、明るくなる、感動できる、共感共鳴できる、そんな記事を期待します。がんばっている人間にスポットをあてる、とくに地域でがんばっている人を、その息吹を生き生きと伝えてほしい。
私のまわりでは、信用できるのはもう共産党しかないという声に包まれています。が、選挙で即共産党の支持につながるかというと、そうはならない現実がまだあります。そのギャップをどう埋めるかが「赤旗」の課題ではないかと思いますよ。「赤旗」の先に日本の未来が見える、世直しへ、いぶし銀のような輝きをもった新聞をめざしてほしいものです。