2008年2月3日(日)「しんぶん赤旗」

福祉・教育は削減のなか

道路だけなぜ長期計画

特定財源 こだわるのは…


 通常国会で大きな焦点になっている道路特定財源の見直し問題。政府・与党は今後十年間、自動車関連の税金を道路建設だけに使いきるための関係法案を国会に提出しています。大もとにある道路建設計画の規模は五十九兆円。政府・与党が道路予算にこだわる狙いをさぐると…。 (佐藤高志)


「総額方式」を改めず

 治山治水、河川、空港、港湾、公園…。さまざまな公共事業があります。しかし、政府が定める公共事業の長期整備計画のうち、総額を先に決めて(総額方式)いるのは現在、「道路整備計画」しかありません。

 かつて一九九〇年代には、アメリカの圧力で六百三十兆円もの税金を公共事業に費やす「公共投資基本計画」がありました。それに沿って治山治水、森林、河川など十六本もの「長期計画」がすすめられてきました。

 しかし、それが膨大な財政赤字を生み、国民から「ムダな大型公共事業の推進策」との批判が高まりました。このため二〇〇二年、小泉内閣が閣議決定した「構造改革と経済財政の中期展望」で「公共投資基本計画」は廃止。これに基づいて〇三年の社会資本整備重点計画法で、国土交通省関連の「長期計画」が一本化され、「総額方式」は原則、すべてなくなりました。

 なぜ道路だけが残っているのでしょうか―。その秘密は、道路特定財源にあります。

 道路特定財源は、ガソリン税などの自動車関連の税金を道路整備だけに使う仕組みです。このため、道路だけは「総額方式」を改めず、今でも「聖域化」されているのです。

 ところが、この道路特定財源の仕組みが今年三月末で期限切れを迎えます。それで政府・与党は、この道路特定財源を“利権の根幹”として残すことに躍起になっているのです。

 一方、福祉や教育などには“特定財源”はありません。公立病院の統廃合計画や少子化に合わせて教員定数を減らす計画など、削減計画はあっても、長期の整備計画はないのが実態です。

 自衛隊には軍備増強計画を定めた「中期防衛力整備計画」(総額二十四兆円超)があります。道路や軍事だけは「聖域化」したままで整備計画を設け、福祉や教育予算は削り続けているのです。

どんな仕掛けで温存

 では、政府・与党はどのような仕組みで、道路特定財源を温存しようとしているのでしょうか。

 政府・与党は、通常国会に道路整備財源特例法改定案と歳入関連法案を提出しています。

 道路整備財源特例法改定案は、自動車関連の巨額の税収を道路建設だけに使うための法律です。同改定案では、ガソリン税などの税収を「十年間、道路整備費の財源に充てなければならない」としています。現行法は五年間ですが、それを十年間に延長。十年間、どれだけの道路を作るかを決める「道路整備事業の量(総額)」と、それを具体化する事業計画(「道路中期計画」)を作成することも義務付けられます。

 一方、財源の税収を保障する歳入関連法案には租税特別措置法改定案(ガソリン税などが対象)と地方税法改定案(軽油引取税などが対象)があります。これらはガソリン税などに上乗せされた暫定税率を「十年延長する」ための法律です。暫定税率は道路建設を加速する役割を果たしてきました。

 今まで五年単位で延長を繰り返してきた道路特定財源は、これらの法案で二倍の十年まで延長幅が広げられることになります。

計画バブル期のまま

 さらに、政府・与党は昨年末の合意で、「道路中期計画」を「五十九兆円を上限にする」と決めました。これは年間五・四兆円(〇八年度)の道路特定財源を全額投資しても足りない規模となっています。

 政府与党は、「真に必要な道路整備に絞った」などと強弁しています。

 しかし、国土交通省の「道路中期計画(素案)」を見ると、その大部分が高速道路などの高規格幹線道路の整備費です。これは高規格幹線道路を全国に一万四千キロも張り巡らす計画。バブル期の一九八七年に立てられた「第四次全国総合開発計画」で決められた方針です。二十年以上も前の過大な計画を再検証することなくすすめることを掲げているにすぎません。

 一日の参院予算委員会の日本共産党の仁比聡平議員の追及では、高規格幹線道路の整備のために、総額だけを先に決めて予算を使い切る仕組みであることも明らかになっています。

 暮らしも経済も大変なときに、高速道路を中心にした道路だけに、五十九兆円もの財源を充てることが本当に必要なのか―。このことが今、鋭く問われています。


道路特定財源維持のしくみ

財源を確保するための

歳入関連法案

 ▽租税特別措置法改定案

  ・自動車重量税、ガソリン税の暫定税率を10年延長

 ▽地方税法改定案

  ・自動車取得税、軽油引取税の暫定税率を10年延長

財源の使途を道路整備に限定するための

道路整備財源特例法改定案

  ・ガソリン税などの税収を道路整備費の財源に充てなければならない

  ・10年間の道路整備予算の総額を決めることを義務づける



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