2008年1月30日(水)「しんぶん赤旗」
京都市の支出は「違法」
同和奨学金の返済肩代わり
桝本市長らに1898万円返還命令
地裁判決
同和奨学金の返済を京都市が所得審査もせずに肩代わりする自立促進援助金の制度は違法として、市民団体「市民ウオッチャー・京都」が桝本頼兼・京都市長らを相手取り、不正に支出した公金の返還を求めていた住民訴訟で、京都地裁(中村隆次裁判長)は二十九日、無審査で一律支給したのは違法だとして、桝本市長らに千八百九十八万円余の返還を命じました。
昨年九月の最高裁に続き、再び京都市の同和特別扱いが断罪されました。
判決は、二〇〇一年度の国の同和対策事業終結にともない京都市が同制度の運用を見直す必要が生じていたにもかかわらず、〇三、〇四年度分(総額四億五千七百万円余)を支出したことについて、「何ら審査を行わずに、申請者全員に対して漫然と援助金を支給したことは、行政の裁量を逸脱し、違法」と指摘しました。
会見で「市民ウオッチャー・京都」事務局長の村井豊明弁護士は「行政の違法を断罪したもので基本的には評価したい。京都市が違法支出をやめない限り訴訟を続ける」と述べました。
同席した、「市民ウオッチャー・京都」幹事で、京都市長選挙候補の中村和雄弁護士は、「今後の支出についても係争中で、同じ判断が引き続き出される。京都市はただちにやめるべきだ」と話しました。
解説
再び断罪された「同和行政」
京都市長選挙(二月三日告示、十七日投票)では、自立促進援助金など「同和行政の終結」が重要争点に浮上しています。「市政刷新の会」の中村弁護士が同制度の廃止を掲げるなか、桝本市政の「継承」を掲げる門川大作・前市教育長=自民、公明、民主府連、社民府連が推薦=は、「判決確定まで、〇七年度分以降の執行を留保する」(「朝日」二十六日付)と述べるなど追い詰められています。
京都市の自立促進援助金制度は、八四年度の発足当初から奨学金返還者の所得審査もせず、〇六年度までの二十三年間で、合計二十四億円を支出しています。
受給対象となる世帯では、〇一、〇二年で年収七百万円以上ある世帯が半分にのぼっています。
市民の批判が高まるなか、京都市は〇四年度から、所得証明書などの提出を求め支給判定を行う要綱改正を行いました。しかし、〇七年度での返還対象者や辞退者は全体の13%。今回の判決も「改正後要綱の所得基準は極めて緩やかである」と指摘します。
〇一、〇二年度分の支出が問われた訴訟では、昨年九月の最高裁で京都市の上告が不受理となり、桝本市長らに約二千万円の賠償命令を下した大阪高裁判決(〇六年三月)が確定しています。
京都市は、〇三年度以前について「申請者全員に支給する」とし、今後二〇二九年までに約四十億円の税金が支出され続けます。